研究課題
中高年女性に好発する更年期障害は、女性自身のQOL低下のみならず多大な労働損失を通じた社会的影響を与えていることが懸念されている。一方、更年期障害に関する医学的知見は未だ十分とは言えず,効果的な社会対策をとることが困難な健康課題と考えられる。本研究は地域在住者コホート研究のデータを用い、更年期障害の遺伝的要因と環境要因との交互作用に関する客観的指標を疫学的に解明し,更年期障害の予防や早期介入を検討する際の有益な医学的知見を得ることを目的としている。2021年度は、解析対象候補者である女性の閉経状況にならびにメタボロームデータについて確認を行い、閉経前・周閉経期・閉経後に移行するにつれ濃度変化がみられることが示された。次に、更年期症状に関する質問紙調査に回答した対象者の入力データを確認し、データ整理を行った。その上で、解析対象候補を選定し、各種変数の分布を記述分析にて確認した。その結果、悪性腫瘍既往がなく、更年期症状に関する質問紙調査に回答した40~60歳の女性は965名であり、そのうち日常生活に支障をきたす程度の更年期症状を自覚、あるいは更年期障害の治療経験がある、と回答した割合は19.2%であった。10項目から構成される簡略更年期指数による更年期症状の出現率は、10の症状すべてにおいて50%を超え、特に出現率が70%を超えていた症状は「疲れやすい」(83.8%)、「肩こり・腰痛・手足の痛みがある」(72.7%)、「イライラする」(72.7%)、「くよくよする」(70.4%)であった。血管運動神経系、精神・神経系、運動・神経系の症状内訳については、それぞれ16.2%、18.7%、28.2%の女性が強度と回答し、すべての合計点から算出された更年期症状の重症度については、51名(37%)は医療機関受診が推奨されるレベルであることが示された。
3: やや遅れている
本研究では、2018~2020年度にかけて実施した第2次包括調査において、閉経前後に生じ得る更年期症状について質問紙調査を実施し、更年期障害の遺伝的要因ならびに環境要因との交互作用に関して検討することとしていた。しかしながら、収集可能であったサンプル数が予想を下回り、結果的に予定していた参加人数の半数以下の参加者からの情報収集にとどまった。以上より、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
収集済の参加者に関してはメタボローム測定が完了しており各種変数の記述分析が進行していることから、今後更年期障害の予防や早期介入に有用なバイオマーカー探索を進めていく。一方、遺伝要因の影響については、サンプル数が不十分であった場合には検討が困難であることから、十分なサンプル数獲得のために収集方法について十分検討する。
質問紙調査の参加人数が当初の予定を下回ったことから、調査ならびにデータ入力に要する費用が下回ったと考えられる。追加データ収集のための調査実施のための使用額とする。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Maturitas
巻: 155 ページ: 54-62
10.1016/j.maturitas.2021