研究課題/領域番号 |
21K17276
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
木戸 尊將 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40633152)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 腸管免疫 / 分泌IgA / 2型ヘルパーT細胞 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
現在の日本人は必須微量元素「亜鉛」の摂取が不足している。我々はこれまで亜鉛欠乏が胸腺や脾臓の免疫細胞に与える影響を解明してきた。本研究では、近年のトレンドである腸管免疫機構に着目し、亜鉛欠乏ラットを用いて腸管バリアである分泌IgAとその産生に関与する免疫細胞への影響を検討した。 SDラット(各群N=7)に標準食(0.01%亜鉛含有)または亜鉛無添加食を毎日17gずつ6週間与えた。亜鉛無添加食と共に週3回IL-4の腹腔内投与(100ng/rat)を施行した群と、6週間亜鉛無添加食で飼育した後に4週間標準食を与え亜鉛の補充療法を行った群の計4群を設定した。亜鉛モデル作製後、小腸を摘出し小腸粘液中の分泌IgAをELISA法で測定した。さらに、小腸粘膜固有層に分布している免疫細胞を検討するために、FACS解析と免疫組織化学染色を用いてCD4+T細胞(CD3+; CD4+)、CD8+T細胞(CD3+; CD8+)、B細胞数(CD3-; B220+)、形質細胞数(CD138)、IL-4/IL-5陽性細胞数を計測した。 亜鉛欠乏群では、分泌IgAは有意に低下し、CD4+T細胞数、CD8+T細胞数、B細胞数、形質細胞数、IL-4/IL-5陽性細胞数も有意に減少した。一方、亜鉛欠乏ラットにIL-4投与した群では、分泌IgAと形質細胞数は有意に低下したが、他の免疫細胞数は標準食ラットと同等であった。亜鉛補充群は、標準食ラットと同等の測定結果であった。 以上より、亜鉛欠乏ラットの小腸では、T細胞とIL-4/IL-5発現の減少に伴い、B細胞/形質細胞数も減少し、その結果、分泌IgAの産生が低下することが示唆された。また、亜鉛欠乏ラットにIL-4を投与しても分泌IgAは低値であったことから、分泌IgAの産生には亜鉛が関与していることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請内容である亜鉛欠乏の腸管免疫機構-バクテリアルトランスロケーションの研究の進捗状況については、計画通りに進行している。最終年度に実施する予定であった腸内細菌叢の解析もT-RFLP法により解析が済んでいる。また、亜鉛欠乏にIL-4投与または亜鉛補充療法の群も同時に実施しており、免疫染色、ウエスタンブロッティング、分泌IgAの結果も解析が済んでいることから、今年度中の論文化を目標に研究を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
腸内細菌叢の解析により、c. difficileやE.coliのピークの検出が高く、またLPS染色により亜鉛欠乏の小腸で陽性面積が有意に増加していた。つまり、バクテリアトランスロケーションに関連していることが推察せれる。 そこで、腸管上皮から透過していると仮定し、腸管のタイトジャンクション、門脈血中のLPS濃度、肝臓での炎症反応や好中球数を解析し、バクテリアトランスロケーションによる肝臓移行を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の直接経費を使い切ってしまったので、10万円を前倒し請求を行った。その残金である。
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