研究課題/領域番号 |
21K17276
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
木戸 尊將 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40633152)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 腸管免疫 / 分泌IgA / 2型ヘルパーT細胞 / バクテリアトランスロケーション / グラム陰性桿菌 / 腸-肝臓軸 |
研究実績の概要 |
【目的】必須微量元素-亜鉛(Zn)は免疫機能に関与するが、現在の日本人は亜鉛摂取量が不足しており、亜鉛不足による免疫機能低下が危惧される。我々の先行研究により、亜鉛が欠乏すると、腸管免疫の「Th2細胞-形質細胞-分泌IgA」経路が抑制されることを発見した。この腸管免疫機能低下は、腸内細菌が腸管上皮を透過し、体内に移行するバクテリアトランスロケーションを誘発する可能性がある。そこで、本研究では、亜鉛欠乏ラットにおいて、腸管上皮の物理的バリア(タイトジャンクション)の変化を調べると共に、リポポリサッカライド(LPS:グラム陰性菌)の組織内の検出を試みた。そして、腸内細菌が門脈を介し肝臓へ移行する“腸-肝臓軸”を検討した。 【結果】亜鉛欠乏ラットでは、門脈血中の白血球数およびLPS濃度が有意に上昇し、小腸中のLPS陽性細胞数が有意に増加した。小腸粘膜固有層内のLPS陽性細胞はTLR4、CD103よりもmyeloperoxidase陽性細胞との重なりを多く認めた。肝臓では、LPS陽性領域が検出され、TLR4、CD68、myeloperoxidase陽性細胞数が有意に増加した。 【考察】亜鉛欠乏ラットの腸管では、腸管免疫の「Th2細胞-形質細胞-分泌IgA」経路の抑制だけでなく、腸管上皮のタイトジャンクションの減弱を認めた。そして、腸管上皮を透過したグラム陰性菌は、その多くが小腸粘膜内で好中球に排除されるが、門脈まで至ったグラム陰性菌が肝臓に到達し、マクロファージや好中球数を増加させたと考えられた。まとめると、亜鉛欠乏状態では“腸-肝臓軸”として腸内細菌が門脈を介し肝臓へ移行することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、本研究に関連した論文を国際誌に投稿中である。また、詳細な機序としてグラム陰性桿菌が腸管上皮を透過していることを発見しており、本申請内容以上に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、投稿中の国際誌の査読に対する意見を執筆中であり、3年の予定期間内の受理までできなかったため、延長し国際誌への受理を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、国際誌に論文を投稿しており、その掲載費の為に次年度に繰り越しを行った。
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