研究実績の概要 |
遺伝子欠損マウスモデルを用いて、環境中親電子性物質アクリルアミド(ACR)への曝露誘発性神経障害における炎症性サイトカインの役割について実験を行った。野生型およびIL-1β遺伝子欠損マウス(オス、10週齢)への4週間ACR曝露(経口投与、0/12.5/25mg/kg bw)を行い、曝露後Functional Observational Battery(FOB)や神経行動実験で神経障害を評価し、脳サンプルを解剖して神経障害および神経炎症マーカーの解析を行った。野生型マウスでは、4週間のACR曝露後、Landing Foot Splay (LFS)は上昇した。NE神経マーカーNETを用いて免疫染色してImageJで神経軸索の長さを定量した結果、脳皮質におけるNE神経障害を確認した。しかし、IL-1β遺伝子欠損マウスでは以上の障害が予想と異なり増加した。また、曝露後の脳皮質サンプルを用いて、リアルタイムPCRで関連遺伝子発現量を測定した。その結果、IL-1β遺伝子欠損マウスにおいてACR曝露によるNrf2およびNrf2の下流にある抗酸化タンパク遺伝子(Nrf2,HO-1,NQO1,GSTMなど)の発現が抑制された。以上より、炎症性サイトカインIL-1βが神経保護的に作用している可能性を示唆された。また、野生型およびTNF-α遺伝子欠損マウスを用いて、同様にACRの4週間経口投与を行い、曝露後神経障害について評価した。野生型マウスでは、ACRへの4週間曝露後、FOBで神経障害を評価した結果、LFSは上昇し、前肢および四肢のGrip Strengthが顕著に減少した。しかし、TNF-α遺伝子欠損は以上の神経障害に対しての防御効果を確認できなかった。以上の結果により、環境中に広く存在する親電子性物質誘発性神経障害における炎症性サイトカインの役割に関して、新たなメカニズムの解明につながることが期待される。
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