研究課題/領域番号 |
21K17278
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研究機関 | 修文大学 |
研究代表者 |
鈴木 隆佳 修文大学, 医療科学部, 講師 (80757740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 石綿繊維 / 含鉄小体 |
研究実績の概要 |
石綿関連疾患を証明するために臨床でも計測されている含鉄小体は、現時点ではその濃度のみが曝露評価として用いられている。しかし、観察される含鉄小体にはいくつかのパターンに分けることができる形状で確認できることから、形状には何らかの意味があるのではないかと考えるが、これらの形状と含鉄小体の核となる石綿繊維との関係性を検討した報告は非常に少ない。本研究では、含鉄小体の形状と核となっている繊維の種類と含鉄小体の形状との関係性を検討して含鉄小体測定による石綿繊維の種類推定の可能性を明らかにし、含鉄小体計測に付随する不確かさの軽減を図るとともに、石綿繊維を含む無機繊維曝露評価における含鉄小体計測のさらなる有用性を検討することを目的としている。 令和3年度は我々のグループが保有している肺内の石綿、非石綿繊維の種類及び濃度が分析済みで、死因が確定している肺試料の中から、肺がん及び中皮腫、石綿肺などの石綿関連疾患で死亡した症例から分析対象となる肺試料の選定を行ったところ約70試料が該当した。これら試料のほとんどはホルマリン固定の肺組織であるが、一部パラフィンブロックの肺試料が含まれていた。パラフィンブロックの肺試料は、組織量が少ないことと、標本作成時の操作が煩雑となることから、今回の分析からは除外した。そのため、石綿関連疾患で死亡した症例は49試料が分析対象となった。また、石綿関連疾患が死因ではないが、肺内石綿繊維濃度の分析結果において、稀にしか確認できないクリソタイルが角閃石系石綿繊維より多いまたは同等程度検出された肺試料や、ほぼ角閃石系石綿しか検出されていない肺試料など、繊維の種類に偏りがあった試料が25例確認できた。今回の研究目的は含鉄小体の形状と核となる繊維との関係を検討することなので、これらの肺試料の分析は非常に有用だと判断し分析対象に加え、合計74例を分析対象として選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大及び蔓延が継続したことに伴い緊急事態宣言が発令され、自宅からのリモートワークを余儀なくされた。またその後も感染拡大を防止する目的で、国主導または県独自のまん延防止重点措置の実施があり、リモートワークの推奨や大学での勤務に関する時間的な制限があり、当初の予定とは異なり、研究を推進するための時間を十分に取ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は、当初の計画では令和3年度に終了している予定であった分析対象試料の選定のうち、特に肺試料採取年や性別などでできる限り近い条件になる肺試料を選定することから開始する。また、石綿小体計測マニュアルに準拠した方法で、選定した肺試料の標本を作成し、含鉄小体及び鉄蛋白の付着がない繊維状の物質の濃度を計測する。その際、含鉄小体は形状別に計数するとともに、含鉄小体及び繊維状の物質の長さも計測して記録する。 R4年度で肺試料のほとんどの分析を終えるつもりであるが、研究計画より少し遅れていることからR5年度も含鉄小体の計測を進め、計測結果から肺内含鉄小体の形状別濃度と石綿繊維との相関性を分析するとともに、含鉄小体の長さと肺内石綿繊維の長さを比較検討し、含鉄小体の形状や長さによる石綿繊維の種類や濃度の推定の可能性を検討する。
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