本研究では、石綿関連疾病の診断や無機繊維の曝露の証明に用いられる位相差顕微鏡を用いた含鉄小体の計測について、より意義のある検査とすべく、含鉄小体の形状別濃度と肺内無機繊維濃度との関係について検討を行った。 最終年度は、これまで集めた肺試料の標本を作成し、位相差顕微鏡で順次計測を実施した。対象は中皮腫群61例、非石綿関連疾患群26例とした。含鉄小体は、亜鈴型、団子・数珠型、繊維を覆う形状(平滑被覆型)、屈曲型、複合型の5種類に分類して計測した。また、含鉄小体計測時に観察される裸の繊維(非被覆繊維)も合わせて計数した。 含鉄小体の各形状の濃度(幾何平均値、単位:103本/乾燥g)(検出率)は、亜鈴型:0.641(44.3%)、団子・数珠型:2.16(95.1%)、平滑被覆型:1.74(100%)、屈曲型:0.143(9.83%)、複合型:0.265(8.20%)であった。非石綿関連疾患群では、亜鈴型:0.720(7.69%)、団子・数珠型:0.311(80.8%)、平滑被覆型:0.355(69.2%)、屈曲型:未検出(0%)、複合型:1.34(3.85%)であった。含鉄小体の形状別濃度と肺内無機繊維濃度との相関を検討した結果、中皮腫群では、団子・数珠型および平滑被覆型ではクリソタイル以外の各濃度と有意な相関を認めた。非石綿関連疾患群では、団子・数珠型がクリソタイル以外の各濃度と、平滑被覆型では、無機繊維、非石綿繊維の各濃度と有意な相関を認めた。 団子・数珠型および平滑被覆型の含鉄小体は、ほとんどの症例で検出され、角閃石系石綿濃度と有意な相関を示したことから、角閃石系石綿を反映している可能性がある。また綿関連疾患と非石綿関連疾患では亜鈴型の含鉄小体の検出率に差があるが、例数が少ないために追加で詳細な検討が必要である。
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