本研究の目的は、医療機関で内視鏡等医療機器の消毒剤として利用され、取扱い作業者に目や呼吸器の刺激、皮膚炎、呼吸器感作性等の健康障害が報告されたオルト-フタルアルデヒド(OPA)製剤取り扱い作業者のOPAばく露濃度と健康影響の関係を明らかにすること、医療機関に適したばく露低減対策を確立することである。現在、OPAの職業性ばく露限界値は日本では勧告されておらず、米国産業衛生専門家会議が作業中のどの部分でも超えてはならない濃度(TLV-C)として2019年に0.1 ppbと極めて低濃度の値を勧告した。したがって、日本においては、0.1 ppbを管理レベルとしたばく露低減対策が必要となる。しかしながら、OPAのばく露濃度と健康影響の関連を調査した報告は少ない。また、従来の特別則に基づく局所排気装置は多くの医療機器が混在する医療機関ではその設置は現実的ではない。令和3年度は、ばく露低減対策として新たな排気装置のOPA分解効果を検証するための低濃度OPAガスの安定的な連続発生法を確立した。令和4,5年度は、OPA製剤取り扱い作業者のOPAばく露濃度(個人ばく露濃度,環境濃度等)と健康影響の関連を見るためのフィールド調査を複数の事業場で実施した。その内、1事業場においてはTLV-Cに対応したばく露低減への取り組みとして既存の排気設備を活用した改善を行った。改善後のTLV-C測定結果は0.2 ppbと0.1 ppbをクリアすることは出来なかったが,改善前濃度の1/10まで濃度が低減した。本成果は現在論文投稿している。また,本ばく露調査は引き続き調査を継続する予定である。
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