研究課題/領域番号 |
21K17280
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
藤倉 雄二 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 内科, 准教授 (60598796)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 分子疫学解析 / 全ゲノムシーケンス / 次世代シーケンサー / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
2022年度は、院内感染の原因微生物としてアシネトバクターと新型コロナウイルスを対象に引き続き研究を進めた。2021年度にレビューしたアシネトバクターについては、論文化し査読ありの国際雑誌に受理され既に公開されている(Antimicrob Steward Healthc Epidemiol. 2022 Aug 8;2(1):e136)。この際に抽出した薬剤耐性アシネトバクターについては全ゲノム解析が終了し、さらに伝播経路予測図の作成をするために検体採取日や入院時期などの患者情報の収集を終了した。現状ではベイズ推定を用いた数理モデルを採り入れたプログラムパッケージ(BadTrIPとBEAST2)により検証を行う予定であるが、アウトブレイクに関連する疫学情報が処理可能な範囲を超えているため、予測図を作成するためのパラメーター設定に工夫が必要な状態である。本手法以外の方法も幅広く検証し、最適な手法を確立する必要がある。 また、本研究の重点項目として設定した新型コロナウイルス感染症のクラスターについては、複数のクラスターについて検体を収集し陽性者からの聞き取りを行った。そのうち一部については解析を実施し、関連学会にて報告を行った(Polymorphism-aware phylogenetic modelとベイズ推定を用いた新型コロナウイルス感染伝播経路予測、第71回日本感染症学会東日本地方会学術集会・第69回日本化学療法学会東日本支部総会 合同学会、2022年10月)。クラスターを構成した陽性者から聞き取った内容から推定される感染経路を概ね支持するような予測図が作成できているが、今後、このモデルの頑健性を検証しつつ、さらに複数の事例を組み入れ、関連雑誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的とした病原微生物については概ね解析が終了し、今後はPC上での経路予測図作成と検証作業が中心となるため、概ね順調である。一方で、取り扱う病原体の種類がまだ少なく、理論の頑健性を十分に検証することについて若干不安が残る点と、最新の解析手法を学ぶ機会が十分でなく、特に学外のバイオインフォマティシャンとの交流が十分に持てていない点は引き続き懸念事項として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度で現在標的として解析を済ませた病原体については伝播経路予測図を作成する。その際、導入すべき理論や最適なプログラムパッケージ、パラメーター設定など、検討事項が複数あり、これらを実際に得られた聞き取り情報や、病原体の伝播経路に関する理解をもとに検証する必要がある。本研究では遺伝的な変動を前提と、それにかかる複雑な計算過程をベイズ推定で処理するという過程をとっているが、この点についてさらに理解を深める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額については次年度の物品購入に充てることを想定している。
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