研究実績の概要 |
超高齢社会にある我が国において, 国民医療費の増大は避けられず, 少ない資源から最大効果を発揮するがん対策策定のための基盤づくりは急務である。近年, がん対策の介入効果をMicrosimulation model(MS)と呼ばれる数理シミュレーションを用いて仮想的に評価・定量化する方法が着目されている。MSは実証研究の実行が非現実的な場合にも結果を迅速に算出できる利点があるが, 既存のmodelは“国全体”のデータやパラメータを基に開発され, 本来がん対策の主体となる都道府県の実情を完全には表現できていない問題点がある。そこで本研究では, 都道府県のがん対策に貢献可能なMSの活用手法の提案を目的とした。 今年度は大腸がんMSの改良として当初の予定通り, 利用可能なデータやパラメータの整備・探索を課題とし, がん登録・人口動態統計資料等を用いたデータ申請・収集とその活用の探索を行った。特に大腸がんMSを用いた将来推計を行うために, 収取したデータから経時的なパラメータを作成・推定し, MSへの導入を行うための改良を行った。結果として現段階で将来推計などの実行が可能となった。 また, 本研究で使用する大腸がんMSを用いて, 複数の検診・精密検診受診率の向上シナリオに基づく死亡率減少効果の定量化についての検討を行った。今年度の検討は, 本MSを実際の介入効果の比較に利用可能かの検討のために利用したが, 今後はパラメータに経時性を導入した場合にも同様な介入効果の定量化が可能か, その方法とともに検討していく。
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