研究課題/領域番号 |
21K17292
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
米岡 大輔 聖路加国際大学, 専門職大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生大学院), 准教授 (60790508)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 統計科学 / 機械学習 / 時空間統計 / 疫学 / 公衆衛生 / 感染症学 / サーベイランス |
研究実績の概要 |
グローバルに人・モノ・情報が移動する時代にあって、COVID-19が世界的なパンデミックとなり、国内外の様々な研究結果が参照されるとともに、各国のCOVID-19対策を始め、保健医療システムの強化や公衆衛生的施策は、データに基づいて意思決定がなされつつある。このような時代背景のなか、我が国のCOVID-19等感染症対策において、ビッグデータや最先端の統計学・機械学習・シミュレーション等の技術を駆使して政策効果の分析や政策評価を行うことは、国内のみならず世界の感染症対策、特にCOVID-19の第二波、第三波に向けた世界的な対応を支援・強化する上で極めて重要である。
こうした政策意思決定の個別具体的な需要を把握するために近年用いられるようになってきたのが迅速サーベイランスシステムである。本研究では、迅速サーベイランスシステムの種々のバイアスの検討とその補正、COVID-19感染拡大状況下での各フェーズ毎のニーズに見合った疫学・統計的方法論の整理と提案を行っている。特に今年度は、感染動態の時空間予測に関連する統計手法の検証および新理論の開発に注力した。また、実データ解析としては、我が国における超過死亡のリアルタイム推定を行い、空間構造等を導入した新しい超過死亡の推定手法への拡張の提案とともに、日本における超過死亡の実態を把握した。これにより、より正確に被害や感染動態等が時間と空間の両軸で予測可能になり、医療資源の最適化を始めとした精緻なエビデンスベースの政策決定に資することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立感染研究所感染症疫学センターと共同で「我が国における超過死亡の推定」を発表し、その中で最新の人口動態調査を用いて都道府県、性、年齢別にCOVID-19に関連する超過死亡発生を統計モデルを用いて推定している。また、これに関していくつかの統計論文も出版した。
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今後の研究の推進方策 |
緊急事態下においては「推定に時間がかかりすぎる」等の問題点を持つ従来型の統計モデルを、迅速にその精度を発揮できるようアップデートを含めた新しい統計モデルとして提案する。その上で、新手法を公表および論文化、オープンソース統計ソフトのR/Pythonでのパッケージ化等を行うことにより研究成果の社会還元を行う。
特に、迅速サーベイランスシステムを用いたレアイベントの迅速な検知モデルの開発に注力する。一般的にCOVID-19陽性や重症化等のレアイベントのモデリングは非常に難しい。これは、レアイベント予測においては、偽陽性が高く出る傾向にあることに関連する。また、SNS調査は、気軽に答えられるが故に虚偽の回答が数多くあるという、特有のバイアスを含む。これらを同時に解決するため、Komori et al. (2015)はAsymptotic logistic regressionと呼ばれるロジスティック分布の対称性を制御するパラメータを追加しミスラベルの確率を制御するモデルを提案した。しかし、このモデルは、ミスラベル確率を所与としており、SNS調査独特のバイアスを共変量により補正できる形にはなっていない。今後は本モデルを、ミスラベル確率をモデル化し、SNS調査独自の共変量を調整できるよう拡張する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた論文が査読が予想以上に長引いたため、掲載料などが支出できなかった。これらの論文の掲載料などを次年度に繰り越して支出したい。
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