研究実績の概要 |
【研究の目的】 妊娠・出産を経ても就業を継続する女性の割合が上昇している。女性が旧来の性別役割である育児に加えて家庭外で働くことは、本人ならびに家族の健康へ影響を与える可能性がある。しかし、日本ではこれまで母親の健康に焦点を当てたデータ収集が十分に行われておらず、育児中の女性の社会的要因と健康についての先行研究は少ない。そこで本研究は、大阪・泉州地域において子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)に参加している約7,100人の母親を対象とした質問紙調査の実施、および国民生活基礎調査の調査票情報の解析により、育児中の女性および家族の健康に影響を与える要因ならびにそのメカニズムを明らかにすることを目的として実施する。
【本研究の成果】 2023年度は、エコチル調査大阪ユニットセンターの協力の下、約7,100人の母親のうち約3,300人を対象に、就業や健康に関する質問紙調査(第三次調査)を実施し、2,230名(67.9%)から回答を得た。研究期間を通して得られたデータを解析した結果、有配偶者の約7割が家庭内の家事の80%以上を担い、約6割が育児の80%以上を担当していることが明らかになった。また、家事分担割合や育児分担割合が高いほど睡眠時間が6時間未満の者の割合が高く、この傾向は就業なしの者には見られず、就業ありの者のみに見られることが明らかになった。本研究により、家庭内の仕事に関して女性に負担が集中し、特に就業と家事・育児の高い分担が重複した場合に、十分な睡眠がとりづらいことが示された。本結果について現在論文化を進めている。 国民生活基礎調査を用いた仮説検証については、研究期間を通じ解析を行い、2023年度には、配偶者の就業時間と主観的不健康感の関連について国際学会にて発表し、妻の就業と男性の主観的不健康感の関連について国内学会にて発表した。
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