研究実績の概要 |
2021年度は、高齢者の死亡前における療養場所の推移に関する記述を行った。政令指定都市であるA市から提供された2012年5月から2019年4月までの65歳以上高齢者(男性41,964名、女性50,546名)の介護レセプトデータ内の要介護認定情報を使用して、男女ごと・また死亡時年齢の5歳ごとの年齢階級ごとに、死亡前6-36か月の間における療養場所の種類を集計して記述した。男性では、自宅で過ごしていた者の割合は、死亡36か月前の時点では、死亡時年齢が95歳未満では約8割、95歳以上では約7割であった。その割合は経時的に単調減少した。医療施設で過ごしていた者の割合は死亡時年齢が高いほど小さく、経時的に単調増加してその年齢階級間の差は大きくなった。介護施設で過ごしていた者の割合も経時的に漸増傾向であった。一方で医療施設とは逆に死亡時年齢が高いほど大きかった。施設の内訳は介護老人保健施設が同一年齢階級内ではほぼ一定の割合で存在しているのに対し、年齢が大きくなるほど、また死亡に近づくほど、指定介護老人福祉施設の割合が大きくなる傾向にあった。女性では、経時的な変化のトレンドは男性と同様であったが、死亡時年齢80歳以上では自宅にいる割合が少なく(死亡6か月前で4-5割程度)、介護施設にいる割合が多くなっていた(死亡36か月前で2-4割、6か月で3-5割程度)。施設の種類としては、特に指定介護老人保健施設の割合が大きかった。医療機関にいる割合はいずれの年齢階級でも男性より若干少ないものの、ほぼ同様であった。そのほか、研究者との連携によってデータの活用や多部門連携による地域づくりを積極的に進めている市町村では、高齢男性の早期死亡リスクが低くなること、およびその効果に所得階層間の差はみられなかったことを明らかにした(Haseda, 2022)。
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