対側リスク低減乳房切除術(Contralateral risk-reducing mastectomy;CRRM)は、乳癌患者が、対側乳癌の発症リスクを低減させるため、癌発症前に乳房を切除する対策である。 CRRMは、乳癌リスクの低減、生存率の改善という治療効果が期待できる一方で、精神的健康における変化、パートナーとの性的関係の変化、ボディ・イメージの変容、女性らしさの感覚の欠如、など患者のQOLに影響を与える可能性がある。CRRMを受けない場合においても、造影乳房MRI検査を行うことにより早期乳癌発見の可能性を高めることが可能と考えられるため、CRRMを行うかどうかは、患者がそのリスクとベネフィットを十分に検討したうえで、患者の意思によって決定されることが重要である。海外諸国においては、このCRRMによるQOLへの影響について複数の調査が行われてきているが、わが国では定量的に評価された報告はまだない。 本研究は、CRRMを検討する乳癌患者を対象としてCRRMによるQOLへの影響を明らかにすることを目的としている。わが国の患者において、こうした予防医療によるQOLへの影響を明らかにすることは、今後の本邦の医療保険の在り方を検討する上で非常に重要な知見となると考えられる。当該年度は、本研究の実施のため、研究機関における倫理委員会での審査手続きを進め、審査承認・実施許可を得た後、研究対象者への研究説明と同意取得を進めた。現在までに14名から同意を得ており、研究参加者は質問紙への回答を行っている。
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