研究課題/領域番号 |
21K17319
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
齋藤 順子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 研究員 (30782354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 職域 / 実装研究 / 喫煙対策 |
研究実績の概要 |
職場の禁煙介入は個人、組織、環境と多層的にアプローチできる強みがある。多層的禁煙介入は職場の喫煙規範を変えることで、個人の禁煙を促進させている可能性があるが、その機序は十分に検討されていない。そこで、本研究は中小事業所における多層的禁煙介入の禁煙成功への効果の機序を解明することを目的としている。 本研究では中小事業所をクラスターとする多層的禁煙介入研究の参加者を対象に、3時点の喫煙規範を測定する予定であるが、多層的禁煙介入研究は現在も実施中であるため、初年度である2021年度は、職場での喫煙規範に関する文献レビューを行った。さらに、2019-2020年に実施した多層的禁煙介入研究のパイロット研究(3事業所の113人の従業員を対象)の3時点データ(ベースライン、6か月後、12か月後)を使用した予備分析を量的・質的ともに行った。パイロット研究は単群での介入前後比較であるため、介入の有無による媒介効果は検証ができないが、介入による喫煙規範の変化を確認することができ、喫煙規範の尺度の妥当性を確認した。さらに、インタビュー調査でも、喫煙規範が介入により変化したとの認識を事業主、健康管理担当者および従業員らがともに認識していることが確認された。この喫煙規範の変化が、多層的禁煙介入によってもたらされたことが示されれば、多層的禁煙介入が禁煙割合を向上させるメカニズムの一つとして説明されるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2021年度は、2019-2020年に実施した多層的禁煙介入研究のパイロット研究の3時点データ(ベースライン、6か月後、12か月後)を使用した予備分析を量的・質的ともに行った。本来は多層的禁煙介入研究の参加者を対象に、ベースライン、3か月後、6か月後にアンケート調査を実施予定であったが、パイロット研究後のフィードバックより、喫煙規範の変化は、3か月後の評価では短すぎて正しく評価されないことが示唆された。さらに、実際に参加事業所をリクルートすることは難しく、3か月ごとの全従業員へのアンケート調査の協力依頼はやや困難であることも予想された。そこで、本研究での3時点の評価時期をベースライン、3か月後、6か月後から、ベースライン、6か月後、12か月後に修正した。パイロット研究は前後比較であるため、介入の有無による媒介効果は検証ができないが、介入による喫煙規範の変化を確認することができ、喫煙規範の尺度の妥当性を確認した。さらに、インタビュー調査でも、喫煙規範が介入により変化したとの認識を健康管理担当者および従業員が認識していることが確認された。以上より、当初計画からの修正はあったものの、次年度は多層的禁煙介入研究の参加者を対象とした研究をスムーズに実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在実施予定の中小事業所における多層的禁煙介入研究の中で行う観察研究として、2022-2023年度前半は、混合研究法を用いて以下の3つの研究を行い、2023年度後半は、3つの研究の知見を混合研究法のアプローチにて統合し論文化する。 【研究1】禁煙支援介入と職場の喫煙規範および禁煙アウトカムとの関連(量的研究)として多層的禁煙支援介入研究の介入事業所の全従業員を対象とし、禁煙介入および喫煙規範を職場レベル、禁煙成功/関心度を個人レベルとしたマルチレベル共分散構造分析を行い、職場の喫煙規範の禁煙に対する職場固有の効果、および介入と禁煙成功/関心度の関連における媒介効果を検証する。 【研究2】媒介効果がより大きい個人および組織特性(量的研究)として、介入後調査データを用いて、イノベーション拡散モデルに基づき、6か月の介入期間中の禁煙施行(24時間以上続く禁煙)の開始時期を6グループ(革新者、初期採用者、前期追随者、後期追随者、遅滞者、未施行者)に分ける。そして、群別に【研究1】で行ったマルチレベル共分散構造分析にて媒介効果を検証し、より媒介効果の高い個人および組織特性を明らかにする。 【研究3】禁煙支援介入が喫煙規範を介して禁煙成功に至るプロセスの解明(質的研究)として、研究1,2の結果を踏まえ介入期間中の喫煙行動に影響を与えた多層的な要因について、実装の多層的決定要因の枠組であるTheoreticalDomainFramework(TDF)の項目に基づき半構造化インタビューを行い、内容分析にて要因を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究の関連研究として、プロトコル論文を含む論文執筆を想定より早く進めることができた。このことにより、論文投稿に伴う英文校正費および論文投稿料が必要となったため、前倒し支払請求をしたが、査読が長引き、論文投稿料は今年度では使用しなかった。そのため次年度はじめに使用予定である。
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