研究課題/領域番号 |
21K17323
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
名取 雄人 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80610104)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カンナビノイド / 神経細胞 / メタボロミクス / 細胞死 |
研究実績の概要 |
本年度はマウス神経芽細胞腫由来Neuro2A(N2A)細胞を用いてカンナビノイド受容体作動薬が細胞死に与える影響およびメタボローム解析を行った。カンナビノイド受容体作動薬には内在性カンナビノイドとして2種(eCBaとeCBb)、合成カンナビノイドとして3種(sCBa、sCBb、sCBc)を用いた。また、これらカンナビノイド受容体作動薬にはCB1受容体およびCB2受容体に対する作用を持つことから、カンナビノイド受容体遮断薬として主にCB1 受容体を遮断するrimonabantとCB2受容体を遮断するSR144528を用いた。細胞毒性の測定には培養上清中LDHを測定した。カンナビノイド受容体作動薬の濃度を1-20 μMまで変動させて24時間培養した結果、合成カンナビノイド受容体作動薬では濃度依存的に細胞死が観察された。一方で内在性カンナビノイドで細胞を処理した場合、細胞死が抑制された。また、内在性カンナビノイドおよび合成カンナビノイド受容体によるこれらの作用はカンナビノイド受容体遮断薬で細胞を前処理することで、抑制されることが分かった。次にこれらカンナビノイド作動薬がN2A細胞のメタボローム変動に与える影響をGC-MS/MSを用いて調べた結果、80成分の代謝物が検出された。コントロールと比較してエンドカンナビノイドeCBaと合成カンナビノイドsCBaはPLS-DA score plotにおいて分離していることが分かった。また、定量した成分のうち、糖代謝中間体や核酸、アミノ酸などが有意に変動することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の流行により機材メンテナンスや物流の遅れが生じ、さらに出勤数および研究室滞在時間を極力減らしために実験に費やす時間を十分に確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の主に以下の二点について研究を推進する。 1) カンナビノイド受容体作動薬がマウス由来神経系細胞N2Aに及ぼす影響に対するマルチオミクスによる網羅的な解析 本年度に構築したメタボローム解析法を用いてカンナビノイド受容体遮断薬を用いてより詳細に代謝物の変動を解析するとともに、LC-MS/MSを用いてプロテオームを解析することで代謝物と関連タンパク質の変動を網羅的に解析する。 2)CB1受容体アゴニストが培養脂肪細胞及びマクロファージの炎症性サイトカイン・プロスタグランジンの合成・分泌に与える作用の解析 マウス由来3T3-L1 脂肪細胞とRAW264.7マクロファージを用いて、これらのCB1受容体アゴニストが炎症性サイトカインやプロスタグランジン類の合成・分泌に与える影響を調べる。CB1受容体アゴニストには基本骨格や由来の異なる内因性、天然由来、合成CB1受容体アゴニスト等を用いる。炎症性サイトカインの解析にはリアルタイムPCRやELISA法を用い、プロスタグランジン類の解析にはLC-MS/MSを用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行による物流の停滞とそれに伴う研究の進捗遅延から当初購入を予定していた試薬購入がなかった。また、学会もオンラインで行われることが多く交通費や宿泊費の使用がなかった。本年度は昨年度分を合わせて学会の現地開催や試薬購入などに充てる予定である。
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