頭部外傷から末梢の多臓器障害が波及するメカニズムは未だ詳細は明らかでない。本研究では、モデルマウスを用いて、まず重症の外傷性脳損傷後に諸臓器に生じる変化を解析し、次にNETsやHMGB1などのDAMPsに着目してこれらの役割を調査した。その結果、脳損傷後の急性期には末梢臓器にも一過性に炎症が波及するが、亜急性期には神経調節機構の破綻が臓器障害に寄与した。また、脳損傷部ではNETsの形成が伺われたが、全身への影響は見出せなかった。一方で、HMGB1は中枢と末梢で相反する機能を有し、脳損傷部で炎症を増悪させるが、末梢にも波及し、諸臓器ではこの急性期炎症に対して抑制性に働いていることが示された。
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