研究課題/領域番号 |
21K17326
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
古川 翔太 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特任助教 (90849093)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 出血性ショック / ミトコンドリア / 細胞外フラックスアナライザー / 血液凝固線溶系 |
研究実績の概要 |
法医学分野では、病死などの場合は心臓内軟凝血がみられ、急死では心臓内に流動血がみられることがよく知られている。また、救急医療分野では外傷・出血により血液凝固が正常に機能しない例が報告されている。これらは出血による組織低酸素状態により凝固系・線溶系の不均衡が起きることが要因とされている。組織低酸素は出血量だけではなく、動脈出血と静脈出血のような出血様式の違いが影響すると考えられる。本研究では動脈性出血と静脈性出血の違いと局所循環との関連を明らかにし、凝固線溶系への影響を検討することを目的としている。方法として動脈性出血モデルと静脈性出血モデルを作成し、それぞれの出血による組織循環障害の現れ方の違いを評価する。組織循環の評価方法として、細胞ミトコンドリアの酸素消費量等を細胞外フラックスアナライザーを用いて測定を試みている。 1) 動脈出血モデルラット及び静脈出血モデルラットの作成:大腿動脈及び大腿静脈にカテーテルを挿入し、出血モデルラットを作成した。動脈出血モデルは今までの実験で作成した経験があった。静脈出血モデルについては、柔らかい静脈に適したカテーテル挿入方法を検討した。出血量は全身血液量の45-50%を目標にしていたが、静脈出血モデルでは血栓が形成されやすく、出血量は40%程度になることが多かった。 2) ミトコンドリア呼吸の測定:ラット心臓・肝臓・腎臓を破砕し遠心処理によりミトコンドリアを抽出、測定に使用した。動物実験室及び測定室の室温が、臓器破砕処理及びミトコンドリア呼吸に影響する可能性を考慮し、適切な実験環境について検討した。現在出血後30分から6時間の測定を実施している。 3) 血液凝固系・線溶系の測定:-80℃保存している血漿・血清サンプルを用いて、凝固線溶系の測定を随時実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気温の低下によるミトコンドリア呼吸測定の不調を経験した。サンプル破砕処理及び測定機器への室温の影響について検討し、改善した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 動脈性出血モデルラット及び静脈性出血モデルラットの作成:出血量は全身血液量の40%で実施する予定である。ミトコンドリア呼吸の測定結果をみながら出血速度について検討する。比較項目にはミトコンドリア呼吸の測定のほか、血液ガス分析、血液凝固検査、線溶系マーカーであるtPA・PAI-1のELISAによる測定、及び各臓器サンプルのPAI-1 mRNA発現量のリアルタイムRT-PCRによる測定を検討している。 2) ミトコンドリア呼吸の測定:出血後30分から6時間のタイムコースでサンプル採取を実施し、データを収集している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れに伴い、予定していたラット、ミトコンドリア呼吸測定器具及び各種試薬の購入を延期していた。また、流通の遅れに伴い、注文した物品が年度内に入荷できない場合があった。そのため、次年度使用額が生じた。今後の助成金の使用用途としては、ラット及び各種試薬購入、ラットモデル作成の物品の購入を検討している。次年度使用額130,805円及び翌年度分の助成金は実験に使用するラット、測定器具及び各種試薬の購入に充てる。
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