本年度は、低体温によって血小板から放出される血小板由来小胞(Platelet-derived microvesicles; PDMV)が有する機能について解析を行った。初めに、コントロール群および低体温群の脾臓血小板を走査型電子顕微鏡で観察すると、低体温群の脾臓血小板では表面に小さな粒子が確認され、透過型電子顕微鏡においても血小板から分離する小粒子が認められた。 これらの粒子がPDMVであると考え、血漿から多血小板血漿を作成し、超遠心によってPDMVを収集した。これらのPDMVについて、血小板マーカーであるCD62PおよびCD41、microvesiclesのマーカーであるCD63およびCLEC2を標的としたウェスタンブロット法で確認した結果、低体温群でより多くのODMVが血中に放出されることが明らかとなった。また、昨年度実施したマウスの脾臓および末梢血液の血小板mRNAを使用したcDNAマイクロアレイによる網羅的発現解析の結果から、Wnt/β-cateninといった組織修復に関連する転写産物の量が大きく変動することが明らかとなっており、これらのPDMVからRNAを抽出し、それらの転写物をリアルタイムRT-PCRで定量化した。その結果、低体温マウスではWnt3aおよびCtnnb1のmRNA量が有意に増加していた。したがって、脾臓血小板のWnt/β-cateninシグナルに関連する遺伝子産物は、低体温刺激によって増加し、これらの遺伝子産物がPDMVによって内在化され、放出されたことが証明された。
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