研究課題/領域番号 |
21K17335
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
野里 同 岩手医科大学, 看護学部, 准教授 (10807225)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 褥瘡 / 低温熱傷 / 低体温予防 / 深部組織損傷 |
研究実績の概要 |
手術中に低体温予防のため加温器を用いて加温するが、加圧部の皮膚温が上昇すると褥瘡発生リスクが高まることが問題となっている。しかし、加圧部皮膚温が上昇した際の皮膚傷害が褥瘡か低温熱傷かは十分に検討されていない。これらのことを明らかにすることは加圧部皮膚温が上昇した際に生じる皮膚傷害のケア方法を検討する上で重要と考えた。そこで、本研究は加圧部皮膚温が上昇した際の皮膚傷害について組織学的な検討を行うことを目的とした。 方法は、吸入麻酔下でラットの背部を剪毛し、加圧装置を用いて背部の骨突出部を中心に100±10mmHgで3時間圧迫した。その際に圧迫部位に温度センサーを留置し、動物用水循環式温熱・冷却パッドを使用して温度調節を行った。加温装置の温度設定は、周術期の低体温予防に関する加温設定を参考に40.0±1.0℃(40℃圧迫群)とした。そして、40.0±1.0℃で圧迫した際に生じる皮膚傷害が低温熱傷または褥瘡であるかを検討するために加圧せずに40.0±1.0℃で3時間仰臥位とする群(40℃無圧迫群)を設けた。 組織学的検討では、圧迫部位の皮膚を、3時間圧迫直後から実験後1、3、及び5日目に肉眼的に観察し、観察後に安楽死させ皮膚組織を摘出し、H&E染色および免疫染色を行い病理組織学的な解析を行った。 その結果、40℃無圧迫群には皮膚傷害が認められない一方で、40℃圧迫群は暗赤色調の不定形な皮膚傷害が認められた。そして、40℃圧迫群の皮膚組織では炎症性細胞の浸潤が強く認められ、血栓が疑われる所見も認められた。これらの結果より、加温した際に生じる加圧部の皮膚傷害は低温熱傷が疑われる症例でも褥瘡である可能性を考慮してケア介入する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
加圧部皮膚温の上昇が関連して生じる皮膚傷害の肉眼的特徴については明らかにでき、加温した際に生じる加圧部の皮膚傷害は低温熱傷が疑われる症例でも褥瘡である可能性を考慮してケア介入する必要性を示すことができた。しかし、組織学的特徴については皮膚傷害が生じるメカニズムが十分に明らかになっていない。
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今後の研究の推進方策 |
加圧部皮膚温の上昇が関連して生じるメカニズムを解明できるよう、染色方法について検討を進めていく。また、これまでの実験結果に関しては学会発表を行い臨床現場に知見の共有を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラット購入費および試薬、消耗品の残額であった。次年度のラット購入費および試薬、消耗品の購入に使用する。
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