研究実績の概要 |
本研究は、医療施設において使用される清拭用タオルが、どのような過程を経てセレウス菌により汚染されるのかを実験的に明らかにし、清拭タオルの細菌汚染 を原因とする院内感染対策を目的とした、適切な清拭タオルの除菌方法を確立することを目指す。 本年度、セレウス菌以外の他の菌種について、保管中のタオルにおける生菌数の変化および汚染タオルの洗濯や各種除菌法による除菌効果を検討した。新品および2, 4ヶ月間繰り返し使用した綿タオル(再生タオル)に、各種細菌(多剤耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌)を接種し、乾燥状態で室温保存、湿潤状態で室温保存、湿潤状態で55℃保存にて保存し、72時間後までの生菌数を求めた。また、各種細菌を付着させた再生タオルを洗濯、80℃で10分間の熱処理、250 ppm次亜塩素酸ナトリウムによる5分間の処理の各除菌処理後の生菌数を求めた。その結果、新品および再生タオルにおける両菌の生菌数は、各タオルを乾燥状態で室温保存、および湿潤状態で55℃保存した場合、72時間後まで大きな変化を認めなかった。一方、湿潤状態で室温保存した場合、多剤耐性黄色ブドウ球菌は新品タオルで生菌数は増加しなかったが、再生タオルでは48時間後に約4 logCFU/sheetから約7 logCFU/sheetに増加した。また、洗濯、熱処理、次亜塩素酸ナトリウムによる除菌では、両菌ともに約4 logCFU/sheetから、各除菌処理後に検出限界未満となった(<1 logCFU/sheet)。 多剤耐性黄色ブドウ球菌や緑膿菌などの芽胞を持たない細菌においては、医療法で示されている洗濯と除菌方法で、検出限界未満となることが明らかとなった。
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