研究課題
看護師が認識しているがん治療に伴う経済毒性に関する看護の役割と看護実践の現状を明らかにすることを目的として、がん患者・家族のケアに従事している看護師を対象とした無記名自記式質問紙調査を実施した。9施設の協力を得て合計615名の看護師に質問紙を配布し、521名から回答を得た(回収率84.7%)。このうち248名(47.6%)が乳がん看護に従事していた。調査の結果から、経済毒性のマネジメントに関する看護実践は看護師の役割認識の高低により実践頻度や実践内容に特徴があることが見出された。役割認識の高い看護師は経済毒性のマネジメントに関する実践頻度が有意に高く、複数の情報に基づく包括的なアセスメントや潜在的なニーズを拾い上げるための積極的なコストコミュニケーションを実践していた。しかし、これらの実践を妨げる要因については役割認識の高低による群間の有意差があった項目は限られており、実践の阻害要因は概ね共通していることが推察された。共通して認識されていた最も頻度の高い阻害要因は「経済的問題に関連する知識の不足」であり、看護支援ガイドには看護師として備えておきたい関連知識の整理が求められていることが明確になった。経済的問題にまつわる制度・資源は複雑かつ多様であるため、経済毒性を表す患者・家族の代表的な悩み・不安を制度等と関連づけて整理することが有益であると考える。一方、役割認識が相対的に低い看護師は経済的問題に対する組織としての体制に影響を受けやすいことが示唆されたため、組織的な取り組みの中に組み込める方略を開発することの重要性も明らかになった。
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Future Oncology
巻: 20 ページ: 269~282
10.2217/fon-2023-1029