研究課題/領域番号 |
21K17372
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
菅野 雄介 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00813403)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん / 緩和ケア / がん遺伝子パネル検査 / がんゲノム / 意思決定 / 看護 |
研究実績の概要 |
がんゲノム医療は、遺伝子情報に基づくがんの個別化治療の一つとして、標準治療が終了したがん患者の新たな治療の選択肢となり、患者と家族の最期の希望になっている。しかし、患者の遺伝子情報に適した薬剤が無い場合や病状が悪化し治療を受けられず亡くなる患者もおり、患者と家族(遺族)の精神的苦痛は強い。本研究の目的は、がんゲノム医療を希望する患者と家族への支援方法を検討することである。具体的には、がんゲノム医療の実態を把握するために、医療を提供する側(医療者)と提供される側(患者、家族または遺族)の経験を混合研究法にて明らかにすること、更に、実態調査にて得られた知見を踏まえ、患者と家族に対し多職種による包括的な支援方法を開発しその実施可能性を検討することである。 1)医療者、患者とその家族、または遺族を対象とした観察研究 1-1)がんゲノム医療に携わる医療者(医師、看護師、心理カウンセラーなど)を対象に、がん遺伝子パネル検査から治療までの過程において、患者と家族へのケアの内容や対応での困難感(医療者)、受けられた医療に対する患者と家族、遺族の思いやニーズ(患者家族)なとについて質的記述的研究にて明らかにする。1-2)医療者、患者や家族を対象に、がんゲノム医療の実践・態度、困難感に関する評価(医療者)、受けられたがんゲノム医療の評価とケアに対するニーズ、精神的負担感など(患者家族)について量的記述的研究にて明らかにする。 2)患者と家族への支援開発と実施可能性を検討するための準実験研究 がんゲノム医療を希望する患者と家族に対し多職種による包括的な支援方法を開発し、対照群を置かない前後比較試験にて、その実施可能性を検討する。包括的な支援については、文献検討及び質的調査の結果から、意思決定支援、カウンセリング、精神的苦痛への緩和、多職種との連携など医療者を対象とした教育支援プログラムを開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、がんゲノム医療を希望する患者と家族を多職種でサポートするために、医療者の支援の現状と患者・家族(遺族)の経験を混合研究法にて明らかにし、実情に沿った支援方法を開発し実施可能性を検討することを目的としている。 今年度は、本研究課題に基づき、研究協力者とClinical Questionを立案し研究コンセプトを検討した。 具体的には、がんゲノム医療を希望したがん患者と家族(遺族)を対象に、がん遺伝子パネル検査前と検査結果後の心情の変化や受けられた治療やケアに対する評価について質的記述的研究にて明らかにすることを目的としている。 また、がんゲノム医療中核拠点病院を除く、中小規模病院に勤務する看護師600名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。対象集団の選定理由として、病院で死亡した患者のうち、中小規模病院で最期を迎える患者が多いからである。これは、がん遺伝子パネル検査の要件を満たす患者に対し、適切な情報提供、治療選択における意思決定支援に関する方策を検討するうえで重要と考えたからである。調査の結果、がんゲノム医療の認識では、「よく知っている」または「知っている」と回答した看護師の合計割合は18%であった。また、がんゲノム医療に関する説明では、「十分に説明できる」または「少し説明できる」と回答した看護師の合計割合は5%であった。一方で、がんゲノム医療に対する期待では、「とても期待している」または「期待している」と回答した看護師の合計割合は30%であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、がんゲノム医療を希望する患者と家族を多職種でサポートするために、医療者の支援の現状と患者・家族(遺族)の経験を混合研究法にて明らかにし、実情に沿った支援方法を開発し実施可能性を検討することを目的としている。 次年度も医療者の支援の現状と患者・家族(遺族)の経験を明らかにするために、昨年度立案したClinical Questionに対し、研究計画書を作成し、倫理審査委員会の承認後に調査を実施できるように進めていく。 また、客観的データに基づいた実態把握を進めるため、ビッグデータを用いた疫学研究を予定している。具体的には、都市部のレセプトデータを利用し、がんで死亡した患者のうち、がん遺伝子パネル検査の受診の有無で、提供された緩和ケアの質を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、Covid-19の感染拡大の影響にて、会議や学会などオンラインで参加したため、旅費の申請が無かった。次年度は、倫理審査委員会の承認後に調査を予定しているため、調査費用や旅費に充当する予定である。
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