研究実績の概要 |
糖尿病はその進行とともに多彩な合併症を引き起こす疾患である。その合併症の多くは動脈硬化に起因している。一般的に糖尿病は慢性的な経過を示すことから、在宅場面での介入が重要な役割を果たす。一方で種々の合併症を引き起こす動脈硬化の評価は専門的な機器が必要になり在宅場面での評価は困難である。本研究の目的は動脈硬化と下肢周囲径との関係を調査し明らかにすることとした。 T2DM患者(114例)の上腕足首間脈波伝播速度 (baPWV)、体組成、体力、患者特性、糖尿病性神経障害の状態、筋力指標を評価した。統計学的解析は、Pearson の積率相関係数検定、Spearman の順位相関係数検定、重回帰分析、ロジスティック回帰分析を実施した。ロジスティック回帰分析の結果、従属変数を1400㎝/s以上を1、以下を0とした場合ではBMI(OR=.84,95%CI.73-.97,p<.05)が採択され、1640㎝/s以上を1、以下を0とした場合では調整変数のみ採択され、1963㎝/s以上を1、以下を0とした場合ではBMI(OR=.63,95%CI.43-.92,p<.05)、アキレス腱反射障害(OR=34.0,95%CI3.38-342,p<.01)、下腿周囲径(OR=.68,95%CI.51-.90,p<.01)が採択された。 本研究はT2DM患者の重症動脈硬化を評価する手法として1つの視点を提供するものである。一般的に動脈硬化の評価には専門の機器を必要とするが、本研究の結果を用いることで在宅医療場面などの専門的な機器がない環境下でも、動脈硬化を評価することが可能になる。 今後は縦断研究に展開していく予定である。
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