研究課題/領域番号 |
21K17466
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
志水 宏太郎 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 流動研究員 (90895947)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 方向転換動作 / 脳卒中 / 歩行 |
研究実績の概要 |
2021年度では、慢性期脳卒中患者6名、視野障害を有する患者6名における方向転換動作について三次元動作解析装置を用いて計測し、主に視野障害の有無による方向転換動作の特徴について比較検討した。結果として視野障害を有する患者における方向転換動作に関しては、健常者や片麻痺患者と比較して方向転換する障害物に対して広く空間マージンを空ける傾向があることが示された。また方向転換する障害物に対する空間マージンや運動軌跡に関しては、視野障害の範囲や中心視残存の有無、両眼視残存の有無、白杖使用の有無により影響される点が明らかになった。特に中心視野欠損に加えて広範な視野欠損のある患者においては、自身の視野内に目標物を収めるために方向転換前に頭部を回旋させる戦略をとる点が示された。なお本結果は2022年度の第59回日本リハビリテーション医学会学術集会にて発表する。 方向転換動作計測のための簡便計測デバイスの開発に関しては、本年度では歩行中における床反力に相当する成分を計測するための靴型デバイスの開発に着手し、健常成人8名を対象にトレッドミル歩行中における床反力成分との同時計測を行うことによる精度検証を実施した。結果として本研究で試作した靴型デバイスから得られる特徴量は、歩行中の床反力の前後方向成分と左右方向成分の特徴量ととの高い相関を示すことが明らかになった。本結果は、2021年度のライフサポート学会大会(LIFE2020-2021)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大により、外来の慢性期脳卒中患者の対象者募集が困難となり、十分な被験者の被験者数の確保ができなった点が原因として挙げられる。また方向転換動作の簡便計測のための靴型デバイスの開発に関しては、方向転換中における運動力学成分を計測するためのセンサーの開発は行うことができたものの、身体中心軌跡や足部末端点の運動軌跡といった方向転換動作の運動学成分を計測するためのシステム開発まで至っておらず、方向転換動作の簡便計測を臨床現場へ実装する点ができていない点も、進捗が遅れている原因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、実験室内での三次元動作解析装置を用いた方向転換動作の運動学的特徴の検証については、視野障害を有する患者を広く募集することで対象者数の拡大に努めるとともに、視野障害が与える方向転換動作への影響についてさらに検証を進めていく予定である。 また簡便計測デバイスについては、靴型デバイスに慣性センサーを搭載した改良版の試作機の作成に着手し、方向転換動作中の運動力学成分のみならず、運動学成分まで計測できるような簡便計測システムの開発を目指す。簡便計測デバイスの試作機の開発が完成し次第、三次元動作解析装置との同時計測を行い、簡便計測デバイスから得られる方向転換中の足部の運動軌跡データや身体中心の運動軌跡のデータの精度検証を実施する予定である。 さらに2021年度の学会発表の成果については、本年度中に英語論文化を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた成果発表のための論文投稿が現在遅れており、その英文校正費や論文投稿費が2021年度にはかからなかったため次年度使用額が生じた。2022年度では、研究遂行に必要な消耗品等の物品購入および靴型デバイスの改良版の試作機制作に必要な物品の購入、成果発表のための論文投稿関連の費用に充てる予定である。
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