研究課題/領域番号 |
21K17471
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
國枝 顕二郎 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (50701885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バキューム嚥下 / 陰圧 / 食道内圧 / 球麻痺 / 嚥下障害 / 胃管 / シリンジ |
研究実績の概要 |
嚥下時に食道内に強い陰圧が形成される「バキューム嚥下」が確認された症例を、新たに複数例報告した。既報の症例は、ワレンベルグ症候群(WS)の嚥下障害患者が「随意的」にバキューム嚥下を獲得していたが、WSの嚥下障害の回復過程で「無意識」にバキューム嚥下を行っていた症例を論文化した(Medicine, 2022)。また、誤嚥防止術後で気管切開があっても、バキューム嚥下を獲得し経口摂取を行っていた脳腫瘍術後の球麻痺の症例を報告した(リハ医学会中部東海地方会, 2022)。 WSによる嚥下障害患者を対象に、バキューム嚥下が指導によって再現できることを嚥下造影検査(VF)と高解像度マノメトリ(HRM)を用いて証明した(投稿準備中)。また、バキューム嚥下は、咽頭残留を除去する新しい嚥下法として有効である可能性がある(摂食嚥下リハ学会2021)。 バキューム嚥下の分かりやすい指導法について検討を行った。HRMを用いると、バキューム嚥下時の食道内の陰圧形成を確認できるが、HRMは高価で侵襲がある。更に、施行可能な施設は極めて限定的である。そこで、侵襲の少ない細径(8Fr.)で軟らかい嚥下圧カテーテルの開発を開始した。 どの施設でも簡便にできる方法として、経鼻胃管の先端を食道内に留置し、空気の入ったシリンジを接続して陰圧を確認する方法(胃管シリンジ法)を考案した。健常者の検討で、バキューム嚥下時にシリンジのピストンは食道内の陰圧を反映して引き込まれることが分かった。VFおよびHRMの同時測定でも、嚥下時の食道内の陰圧を反映してピストンが動くことを確認し、今後報告予定である(摂食嚥下リハ学会2022)。 バキューム嚥下の総説を発表した(日本神経筋疾患摂食嚥下・栄養学会2021)。バキューム嚥下は、他の施設や海外から、指導法について問い合わせがある。オンラインでの指導法の講習会などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調である。バキューム嚥下を自身で獲得していた症例を、高解像度マノメトリ(HRM)を用いて複数例経験し学会で報告および論文化した。HRMを用いた検討では、健常者でも嚥下障害患者でも指導によって嚥下時に食道内に強い陰圧を形成できることが分かった。現在、論文投稿準備中である。 バキューム嚥下の分かりやすい指導法の確立が課題である。HRMは高価で侵襲もあるため、細径(6 Fr.)の軟らかい圧センサーカテーテルの開発を開始した。圧センサーの位置やカテーテルの柔らかさなどを検討中である。 経鼻胃管の先端を食道内に留置し、空気の入ったシリンジを用いた胃管シリンジ法を考案した。この方法は、被検者自身もシリンジのピストンの動きが見えるため、視覚的なフィードバックも可能である。言語聴覚士を含むチームで、健常者および嚥下障害患者を対象とした、有効性の検証を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
バキューム嚥下を自身で獲得していた症例を、高解像度マノメトリ(HRM)を用いて複数例経験した。症例報告として論文化した。HRMを用いた検討では、健常者でも嚥下障害患者でも指導によって嚥下時に食道内に強い陰圧を形成できることが分かった。学会で報告しており、論文投稿準備中である。 バキューム嚥下の分かりやすい指導法の確立が課題である。HRMは高価で侵襲もあるため、細径(6 Fr.)の軟らかい圧センサーカテーテルの開発を開始した。圧センサーの位置やカテーテルの太さ、柔らかさなどを検討している。 経鼻胃管の先端を食道内に留置し、空気の入ったシリンジを用いた胃管シリンジ法を考案した。この方法は、被検者自身もシリンジのピストンの動きが見えるため、視覚的なフィードバックも可能である。言語聴覚士を含むチームで、健常者を対象に有効性の検証を開始している。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大に伴い、国内や国際学会など現地での発表の機会が減少し、移動費用がかからなかった。 令和3年度に、バキューム嚥下を獲得していた症例を多く経験した。また経鼻胃管シリンジ法や、細径の圧センサーカテーテルの開発などを開始している。これらの開発費用に充てる予定である。また、バキューム嚥下の指導法の動画作成に必要な経費として使用する。 投稿準備中の論文も複数あり、オープンアクセスに必要な経費として使用する。
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