研究課題/領域番号 |
21K17477
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
上條 翔太郎 昭和大学, 薬学部, 講師 (50894143)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有酸素運動 / 至適運動強度 / 神経新生 / 高齢者 / 認知症 |
研究実績の概要 |
本研究は高齢マウスを用いて,加齢により神経新生が低下した海馬において神経新生を促す至適な運動強度を解明することを目的とする. ヒト,マウス共に加齢により海馬神経新生が減少し,認知機能低下と関連する.マイオカインは骨格筋から分泌されるサイトカインの総称である.運動は骨格筋からマイオカインを分泌させ,海馬神経新生を促し認知機能を改善させる.しかし高齢変化した海馬において神経新生を促す至適運動強度は明らかにされていない.最大酸素消費量に基づく運動強度により海馬神経新生の程度,骨格筋や脳組織内でのマイオカイン量,生体ストレス反応の程度を定量的に測定し,高齢変化の生じた脳において神経新生を促す至適運動強度を解明する. 高齢マウスの海馬における神経新生を促し,認知機能を改善させるための酸素消費量を指標とした至適な運動強度を解明するために,2年間の研究計画を設定した. 令和3年度には先行研究をもとに高齢マウスを用いて,密閉チャンバー内に設置されたトレッドミルでマウスを運動させ最大酸素消費量を測定した.マウスは微細な環境の変化やドレッド速度変化により酸素消費量が変化するため,最大酸素消費量を測定するための環境のセッティングやトレッドミル速度を変化させるプロトコールの検証を行った.検証したプロトコールにおいて最大酸素消費量に到達しているかの確認のために,トレッドミル運動負荷後に尾静脈から採血し代謝の指標として乳酸を測定キットで測定した.認知機能評価のためにY字型迷路試験を行い,測定機器のセッティング条件検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究をもとに高齢マウスを用いて密閉チャンバー内に設置されたトレッドミルでマウスを運動させ,最大酸素消費量を測定した.マウスは照度や音など微細な環境の変化により酸素消費量が変化するため,最大酸素消費量を測定するための環境のセッティングの検証を行った.また,漸増運動により最大酸素消費量を測定したが,先行研究をもとにトレッドミル速度を変化させるプロトコールを確立し,またこのプロトコールで最大酸素消費量に達しているかの検証を行った. 以上の環境設定の検証,最大酸素消費量を求める漸増運動のプロトコールの検証に時間を要したため.
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今後の研究の推進方策 |
最大酸素消費量を求める漸増運動のプロトコールならびに環境のセッティングを行った.令和4年度では最大酸素消費量から算出した目標の運動強度で走行が行えるかを検証する.その後本来の計画とおり,細胞新生 の評価:トレッドミル運動負荷中Bromedeoxyuridine (BrdU)をマウス腹腔内に注射する.トレッドミル運動後に海馬歯状回に対してBrdUとNeuN 抗体の二重免疫染色と,Doublecortin抗体での免疫染色を用いて新生神経細胞の発現量を評価する. 樹状突起の変化:ニューロフィラメント抗 体を用いた免疫染色またはゴルジ染色を用いて樹状突起の形態的変化を評価する. グリア細胞の評価:海馬歯状回においてBrdU+NeuN抗体とIba- 1またはGFAP抗体の三重免疫染色により細胞発現量の変化を評価する.海馬神経新生に作用する生体反応の測定として,トレ ッドミル運動負荷後に筋,血液でのマイオカイン量,海馬でのBDNF発現量を測定する. mRNA量をreal-time PCR法で,タンパク量をELISA法で測 定し運動強度による分泌量の違いを解明する. マイオカイン測定:骨格筋,血液においてBDNF,イリシン,カゼプシンB,IGF-1,Pgc1-αのmRNA 量およびタンパク量を測定する.海馬でのBDNF発現量測定:海馬でのBDNF発現部位を免疫染色で,タンパク発現量をWestern blot法で評価する .ストレス反応測定:運動負荷中尾静脈から採血しACTHをELISA 法で測定する. これらの実験の成果を国内学会および国際学会で発表し,論文発表を行う計画であり,成果発表のために経費を使用する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
最大酸素消費量を求める漸増運動のプロトコールならびに環境のセッティングを行った.この検証を行ったために,試薬など当初購入を計画していた物品の購入に至らなかった. 令和4年度では最大酸素消費量から算出した目標の運動強度で走行が行えるかを検証する.その後本来の計画通り,免疫染色を用いて新生神経細胞の発現量,樹状突起の形態的変化, 海馬歯状回におけるグリア細胞の細胞発現量の変化を評価する.海馬神経新生に作用する生体反応の測定として,トレッドミル運動負荷後に筋,血液でのBDNF,イリシン,カゼプシンB,IGF-1,Pgc1-α発現量を測定する. mRNA量をreal-time PCR法で,タンパク量をELISA法で測定し運動強度による分泌量の違いを解明する.また海馬でのBDNF発現量を測定する. 海馬でのBDNF発現部位を免疫染色で,タンパク発現量をWestern blot法で評価する .ストレス反応測定:運動負荷中尾静脈から採血しACTHをELISA 法で測定する.これらの実験の成果を国内学会および国際学会で発表し,論文発表を行う計画である.
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