本研究課題では、現代の超高齢社会において重要な課題である嚥下機能の改善を目指している。嚥下機能は、口腔・咽頭・喉頭領域に分布する感覚神経からの感覚情報を受けて、脳幹などに分布する運動ニューロンへ刺激が伝わり、口腔・咽頭・喉頭などの筋が収縮をすることで役割をはたしている。この過程で、いずれかに異常が認められると嚥下障害が発症すると考えられる。そこで、本研究では嚥下障害の原因となりうる運動障害性疾患に着目し研究をすすめることにした。具体的には、運動失調症のモデルマウスであるジストニンノックアウトマウスを使用し、コントロールマウスと比較しながら嚥下に関わる筋や頭頚部の感覚神経などを精査することで、運動失調症における嚥下障害のメカニズム解明をおこなうことを目的とした。 ジストニンノックアウトマウスおよびコントロールマウスについて、頭頚部の各種組織の組織切片を作成し、H-E染色を行い比較を行った。その結果、ジストニンノックアウトマウスでは頭頚部の筋において、筋組織の萎縮が観察された。 次に、各種組織におけるセンサー分布や神経伝達物質の比較を行うため、免疫染色を行った。その結果、各種組織においてPGP9.5による神経線維の観察が行えた。 本年度では詳細な解析を行い、組織によって末梢神経の分布密度が異なることが示唆された。ジストニンノックアウトマウスの耳下腺の腺房では、ワイルドタイプマウスと比較して神経線維の分布密度が低かった。一方、顎下腺の腺房においては、両者での差は認められなかった。また、各種口腔咽頭粘膜に分布する神経線維も、ジストニンノックアウトマウスではワイルドタイプマウスよりもその分布密度が低い傾向にあった。一方、皮膚においてはその差は小さいと考えられた。 今後はこれまでに得られた成果をもとに標的とする部位やセンサーを決定し、生理学的な評価を展開することが可能と考える。
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