研究課題
本研究の目的は肺癌手術患者における術後の呼吸筋力と運動耐容能、健康関連QoLの関連性を明らかにするとともに、術後の呼吸筋力低下患者に対する呼吸筋トレーニングの有効性を検証することである。2021年度は、肺癌手術患者における手術前後の呼吸筋力の変化を明らかにすることを目的に前向き観察研究を開始した。しかしながら新型コロナウィルスの感染拡大のため、唾液などの飛沫リスクが高い呼吸筋力評価が感染予防の観点より実施不能となり、データ収集は予想症例数を大きく下回るわずか19例にとどまった。19例の患者の特徴は、年齢 73.0(70.0-79.0)歳、男性 10例(53%)、臨床病期 1A 11例(58%)、胸腔鏡手術 17例(89%)、肺葉切除 16例(84%)であった。呼吸筋力は最大吸気口腔内圧(PI max)と最大呼気口腔内圧(PE max)を指標とし、術前の呼吸筋力はPI max 62.1(49.1-82.4)cmH2O、PE max 75.0(49.6-102.2)cmH2Oであった。これに対して術後は、PI max 48.7(38.5-76.7)cmH2O、PE max 61.6(34.2-88.0)cmH2OとPI max、PE maxいずれも術前よりも低値であった。呼吸筋力と運動耐容能および健康関連QoLとの関連性については、症例数が不足しているため統計解析が行えず、次年度以降の検討課題となった。
4: 遅れている
新型コロナウィルスの感染拡大のため、唾液などの飛沫リスクが高い呼吸筋力評価が感染予防の観点より実施不能となり、データ収集が予想症例数を大きく下回った。
2022年度は、肺癌手術前後の呼吸筋力の変化と運動耐容能および健康関連QoLとの関連性に関する調査を継続する。年間の対象患者は120例程度であり、新型コロナウィルスの感染流行に伴う制限がなければ予定症例数に到達することが予想される。またデータ収集の状況次第では、研究の実施機関の延長を決定し、スケジュールの調整を行う。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、研究計画の初期段階である肺癌手術前後の呼吸筋力の変化に関する調査のみに研究がとどまり、対象患者の人数分機器購入が必要となる呼吸筋トレーニングが適用されなかったため、次年度への予算持ち越しが必要となった。また、呼吸筋力を始めとした各種評価も積極的な実施が制約されたため、それらを実施するために追加購入予定であった機器を購入しなかったことや、感染拡大に伴う参加予定学会の開催中止によって旅費が必要とならなかったことも次年度へ予算を繰り越した要因である。次年度は使用予定であった予算を使用して、昨年度購入予定であった測定機器の追加購入し、症例数の集積を進める。加えて、呼吸筋トレーニングに関しても器具を購入し、介入研究のパイロット試験も開始を予定する。
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