研究実績の概要 |
ヒトが日常生活動作(Activity of daily living: ADL)で使う肘関節可動域は100°以上とされ, 肘関節周辺術後患者には, 関節可動域制限と「動かしにくさ」が生じている. これらの障害に対して行われる筋電図バイオフィードバック(BF)療法は, 筋出力を制御し, 術後の関節可動域練習を円滑にする効果がある. しかし, BF療法の効果判定基準はなく, 終了時期の判断は臨床家の経験則に頼っている. これまでに, 肘関節術後患者は上腕二頭筋の随意収縮後に筋が弛緩するまでの時間が健側に比べ患側は遅延することが明らかになっている.この研究では,肘関節周辺術後患者の反応時間の遅延をBF療法の効果判定指標とすることに着想した.これまでの検証により, 肘関節術後患者はBF療法により上腕二頭筋の筋出力制御ができるようになり, 関節可動域の改善, ADL能力が改善することが示されつつある. 本研究では, ①健常データを用いてBF療法の効果判定指標の妥当性を検証し, BF療法実施患者のこの指標の変化量を用いて基準を作成する. ②BF療法による運動とADLのパラメータ変化を解析して臨床的に意義のある変化量を算出し, BF療法の終了時期を明らかにする. この研究は, BF療法の効果判定とともに終了時期の判断基準を定め, 肘関節術後患者の早期社会復帰とリハ実施期間を最適化して医療費を削減し, 患者と医療者双方にとっての利得を目的とする.
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