研究課題
われわれはマウスがん悪液質モデルを用いて、悪液質性骨格筋萎縮に関わる因子を検討した。悪液質モデルは、BALB/cマウスに対し、CT26癌細胞(1*10^6 / 0.2mL)を腹腔内接種にて作成し、平均40%程度の骨格筋萎縮が生じるモデルを確立している。悪液質の腹水ではHMGB1とTNF-αの増加を確認した。HMGB1は、骨格筋においてmTOR活性を抑制し、オートファジー関連タンパク質を増加させ、オートファジーを誘発した。次に、HMGB1を含む腹水を事前に筋管細胞に分化させたC2C12細胞の培地に20%添加し、48時間培養後、骨格筋ミトコンドリア代謝を測定した。腹水処理されたC2C12細胞のミトコンドリアは基礎呼吸、ATP産生、プロトンリーク、最大呼吸、および予備容量が大幅に低下した。これらの結果より、HMGB1に関連するミトコンドリア機能障害は悪液質骨格筋萎縮の1つの要因に関与している可能性が示唆された。HMGB1は重症感染症における増悪因子として知られており、TNFα、IL-1β、IFNγなどとともに相互分泌誘導作用を有し、サイトカイン・ストームの発生の引き金を引くことから、COVID-19感染症における役割についても注目が集まっている。HMGB1がサルコペニアを惹起することが今回の検討から明らかになったことから、COVID-19感染症においてもHMGB1がサルコペニアの原因因子として重要視される。
2: おおむね順調に進展している
HMGB1が重症感染症におけるサルコペニアの原因因子として重視されることが明らかになり、今後の研究の焦点を絞り込むことが可能になった。
COVID-19感染症モデルを用いてHMGB1の動態を明らかにするとともに、HMGB1標的治療の可能性を検討する。
動物実験を次年度施行することにしたため、その費用が次年度使用額となった。本実験は次年度速やかに実施する予定である。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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