研究課題
パーキンソン病やアルツハイマー病では感覚過敏や痛みなどの感覚異常が生じる。しかしその原因については未だに解明されていない。我々はこれまでの研究で、マイネルト基底核(NBM)の損傷が、一次体性感覚皮質(S1)の神経応答の強さと範囲を異常に増大させること、および感覚過敏様の行動が生じることをラットを対象として明らかにしてきた。そこで本研究ではラットを対象として、S1における神経活動の制御により、痛み用行動の制御(治療)を試みた。まず選択的にNBMのアセチルコリンニューロンまたは中脳黒質部(SN)のドーパミンニューロンを変性させたラットを作製した。電子von Frey testを用いて痛み行動を計測したところ、NBMおよびSN変性動物はどちらも機械刺激閾値の低下を認め、類似の痛み行動が示された。次に、痛みを発症した動物に対して、膜電位イメージング法を用いてS1の感覚応答を計測した。その結果、SN変性ラットにおいては、対照群と比べて感覚応答が過剰に増大していることが明らかとなった。さらにS1の神経応答の大きさを直接的に調節するために、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)の適用を試みたところ、陽極tDCSにより、増大した感覚応答が縮小し、行動学的にも痛み行動が一時的に軽減することが示された。これらの結果より、NBMやSN変性における痛み行動の発現とその程度には、S1の過剰な感覚応答が少なくとも部分的には関与していると考えられる。
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Behavioural Brain Research
巻: 460 ページ: 114815~114815
10.1016/j.bbr.2023.114815
bioRχiv
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10.1101/2023.12.28.573535