研究課題/領域番号 |
21K17509
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
黒川 由貴 金沢大学, 附属病院, 理学療法士 (80792811)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロコモティブシンドローム / 新型コロナウイルス感染症 / 活動自粛 / 運動機能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新型コロナウイルス感染症拡大による活動制限が、ロコモ関連疾患の手術後の運動機能、ロコモの改善に与える影響を調査し、特に低下しやすい運動機能を特定することで最適な運動プログラムを作成することである。計画通り、新型コロナウイルス感染症流行により外出自粛が拡大した2020年4月以降にロコモ関連疾患である脊椎・下肢関節の変性疾患に対して手術が施行された症例の手術前、手術後1年のデータに加えて、今年度も同様にデータ収集を行い、現時点で約300例の症例登録が完了している。調査項目に関しても、身体データ(身長、体重、筋肉量(Inbodyを使用)など)、運動機能(握力、膝伸展筋力(ミュータスFー1を使用)、体幹筋力(体幹運動器具RECOREを使用)、片足立位時間、歩行速度など)を当初の予定通りに縦断的に評価できている。 初年度に得られたデータをもとに解析を行った結果、新型コロナウイルス感染症流行後にロコモ関連疾患に対して手術が施行された症例の術後のロコモ度は、それ以前の改善率から約2割低下していることが明らかとなった。世界中で新型コロナウイルス感染症流行による非感染者の活動量低下や運動機会の減少は既に報告があるが、手術症例のロコモ度に与える影響については報告がない。引き続き症例登録、データ収集を行い、具体的な運動機能への影響を明らかにすることで運動プログラムの作成に進めたい。さらに、得られた結果に関して国内・国際学会にて報告を行なっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標症例数は200例である。新型コロナウイルス感染症に対する方策として当院では手術件数の減少や、手術の延期などの対策が行われたが、現在約300例の症例を登録することができた。手術後1年までのフォローアップは約90例を達成しており、フォローアップ率は新型コロナウイルス感染症流行前の水準と同等を維持てきている。そのため症例データの収集に関しては概ね順調と考える。さらに、前年度の時点で集取できた65例のデータをもとに、新型コロナウイルス感染症流行前の症例との比較を既に行うことができており、この結果は今年度に学会発表することが決定している。まだ研究開始より1年でああるが、おおむね研究遂行としては順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も感染対策を徹底した上で、ロコモ関連疾患に対する手術症例に対する運動機能、及びロコモの評価を継続する予定である。既に前年度に収集したデータに新たなデータを加えて、コロナ禍によるステイホーム、外出自粛による活動制限が与えたロコモ関連疾患の術後のロコモ度及び運動機能の改善率の低下に影響する因子を詳細に解析する。解析結果に関しては今後は学会発表および論文の作成を行っていく。課題としては、外出自粛の程度に変動があるため、変異株の出現などで一時的に活動自粛が高まっている時期、ワクチン接種により感染者数が減少したことから外出自粛が緩和した時期があったことを踏まえて分析を進める必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ分析に使用しているノートパソコンが故障したため、次年度予算として使用予定である。また、前年度は学会がオンライン開催されることがほとんどであり、旅費の使用がなかった。本年度は可能であれば現地で学会発表を行うために、旅費として使用予定である。また、現在英語論文を作成中であり、その英文校正費、論文投稿費としても計上したいと考える。
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