腸内環境のエース「短鎖脂肪酸」をいかに増やすか、運動処方の開発

2023 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K17521
• 研究機関: 藍野大学
• 研究代表者: 森田 恵美子 藍野大学, 医療保健学部, 准教授 (90465659)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 腸内細菌 / 短鎖脂肪酸 / 速歩 / 身体活動量

研究実績の概要

本研究は、腸内環境に対する運動効果を、腸内細菌および短鎖脂肪酸量の面から検証することを目的としている。2023年度は、これまでに収集した30名のデータに関して、まず横断研究として、運動介入前の腸内細菌叢および短鎖脂肪酸量と日頃の身体活動量との関連を分析した。その結果、日頃5METs以上の早歩きをする対象者は、短鎖脂肪酸産生菌の一つであるEubacterium菌が多いことが示された。この内容を論文化しBiomedical Soft Computing and Human Sciencesに投稿し、アクセプトされている（出版は未）。次に、縦断研究として運動介入効果を検証した。その結果、毎日5METS以上の早歩きを20分実施すると、短鎖脂肪酸産生菌であるBifidobacteriumを介して、短鎖脂肪酸量が増加することが明らかとなった。この内容については、現在論文化し、投稿するまでに至っている。
さらに、2023年度は腸内環境について腸内細菌の数だけではなく、多様性の面からも分析を行った。その結果、若年者においては、身体活動量および運動介入と腸内環境の多様性について、関連性は見出されなかった。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の進歩に関しては、概ね順調である。理由としては、当初予定していた対象者30名のデータを収集し分析できたこと、横断研究に関する論文投稿を終え、アクセプトされた点にある。また、縦断研究に関する論文に関しても投稿できる状況となり、今後投稿する予定の段階まできている。但し、対象者の数に関して、当初予定していた人数より10名ほど少ない状況となっている。その理由は、腸内細菌等の分析料が、当初予定していた費用よりも高額となり、予算の関係上、対象者を減らざるを得ない状況となったためである。
以上のことから、対象者の数以外は、研究は概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は、これまでの研究の集大成として、研究内容についての発表を行っていくことに重点を置く予定である。具体的には、腸内細菌および短鎖脂肪酸に対する運動介入についての論文が、アクセプトされることを目指す。また、研究を通して、筋量および筋肉が腸内環境に影響を与えるという結果を見出したため、それに関する論文投稿を目指す予定である。

次年度使用額が生じた理由

論文投稿料および英文校正料が関係している。現在、横断研究に関する論文がアクセプトされているが、まだ出版には至っておらず、その支払いが未払いになっている。さらには、縦断研究に関する論文の英文校正が終了しているが、その支払いが事務手続き上、未払いのままである。よって、2024年度は、これらの支払いに関しては2023年度分より行うとともに、当初から計画していた2024年度分予算を用いて、引き続き研究を実施する。