研究課題/領域番号 |
21K17523
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
飯村 大智 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (40881842)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 吃音 / スティグマ / 尺度開発 / 臨床応用 / 認識 |
研究実績の概要 |
当該年度においては,成人吃音者の心理の一側面であるスティグマの評価を目的に,吃音のセルフスティグマ尺度(Self-Stigma of Stuttering Scale:4S)の日本語版(4S-J)の尺度開発および標準化に向けた信頼性・妥当性の検討を原案者(米国)との意見交換も交えながら実施した。因子分析の結果の原尺度との比較や,短時間で行えるような臨床での応用可能性も検討し,オリジナルの33項目から各因子への関連の強い16項目を抽出した短縮版(4S-J-16)の作成を試みた。4S-J-16には原案と同じ3因子構造であり,かつある程度の信頼性・妥当性を有することが分かった。このことより,日本においても吃音者のセルフスティグマを定量的に評価することが可能になったと考えられる。 さらに,吃音臨床での尺度の応用可能性を検討するために,4Sを使用した海外の先行研究との比較を行い言語や文化間でのセルフスティグマの差異を検証した。米国で測定されたスコアと比較すると,一部の下位尺度において有意にスティグマのスコアが高く,セルフスティグマには文化的相違もあることが示唆された。 また,吃音のスティグマが付与される社会心理学的要因を検討するために,吃音の認識,態度,知識などとの関連を非吃音者の質問紙による調査データを用いて分析を進めた。さらに,短縮版セルフスティグマ尺度(4S-J-16)の基準関連妥当性の評価のために,英語で標準化が行われているコミュニケーション態度尺度(S-24)の日本語における標準値の収集および経時的な態度変化を含めた信頼性および妥当性の検証を,調査法と文献レビューを組み合わせることで試みた。その結果,日本語版のS-24においてもある程度の信頼性・妥当性を有していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吃音のセルフスティグマ尺度(4S)の短縮版(4S-J-16)についてはある程度の信頼性・妥当性が確認されたことにより,2年目~3年目前半までの目標としていた,尺度開発の成果発表(論文投稿)の準備を早い段階から進めることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,当該年度に行った成果発表(学会発表,論文投稿)を行い,QOLを見据えた成人吃音者の評価方法の開発を検討していくために,吃音臨床における主要なアウトカムやQOLとの関連をレビューなどの手法を用いて精査する。国内ではコミュニケーション態度の測定にはS-24が広く使われ,今回その尺度の信頼性・妥当性が検証されたが,文献レビューの過程でS-24の尺度上の限界や海外では近年BigCATなどが使われていることが分かった。また,海外の研究との比較を行っていく中で,4Sを使用した海外の先行研究は少ない。今後,臨床介入研究により本尺度の評価を進める前に,海外で4Sの使用状況や臨床で使用できるかについて探っていく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により,旅費として当該年度に予算計上していた研究打ち合わせの多くをオンラインで実施することとなった。次年度においては感染症拡大の情勢に留意しながら,研究打ち合わせおよび学会での成果発表を行っていく予定である。また当該年度に尺度開発の研究が進んだことより,論文執筆および投稿に関連する費用に当該年度の計上分を充てる予定である。
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