研究課題/領域番号 |
21K17536
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
元開 早絵 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60792877)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 重症心身障害児 / 摂食嚥下 / 在宅診療 / 地域連携 |
研究実績の概要 |
初年度となる今年度は、摂食指導の開始基準となる全身状況、及び連携している医科や他職種が摂食指導開始可能と判断する全身的な発達状況を調査し、より適切なタイミングで介入開始に至るための観察項目を明らかにする段階であった。 主治医からの診療情報提供書及び診療録より患児の全身状況、医療的ケアの状況、摂食嚥下機能発達段階等の調査を行った。令和3年4月1日から令和4年3月31日までの1年間に日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科を在宅訪問診療にて初回受診した14名(男女各7名、0歳から18歳、平均年齢4.21±5.41歳)を対象とした。初回受診時の診療情報提供元は、訪問医科主治医からが最も多く10件であった。原疾患は18トリソミー等染色体異常が7名と多かった。14名全てで何らかの医療的ケアを必要とし、13名は主に経管栄養であった。初診時の遠城寺式・乳幼児分析的発達検査において、未定頸は半数の7名に留まるものの、1名を除いて自力で顔の向きを変えることは可能であった。 初診時の摂食嚥下機能評価については、8名が嚥下機能獲得期であった。粗大運動能と摂食嚥下機能の関連をみると、発達状況に傾向は見られなかった。当初、「定頸の有無」という大きな区別ではなく、定頸未満を細かく評価し検討を行えば嚥下機能発達との相関がみられるのではないかと考えたが、今年度の調査では傾向がみられず、初診症例の追跡、及び来年度以降の初診症例での更なる検討が必要であると考えられた。 対象とした14名では、初診訪問時に食物を使用した味覚刺激での直接訓練を指導可能であったのは13名であり、間接訓練の指導にとどまった1名を見てみると持続吸引を使用し、嚥下反射が外部観察では確認困難であった。 以上より、今後は全身的な発達に加え、嚥下中枢を含めた脳の障害部位との検討も必要となることから、より医科的な情報収集の必要性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では、今年度中に訪問診療での初診患者を蓄積し、摂食指導の介入を行った経過を患児の発達状況と照らし合わせながら集積していく予定であったが、COVID-19の感染拡大により、以前に比べ訪問の間隔頻度を調整する必要があり、当初の予定通りの進捗状況となっていない。また、訪問診療の対象となる患児の傾向として、人工呼吸器の使用等、呼吸状態に不安のある患児も多く、感染拡大前に比べ受診を控える傾向にあるものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は引き続き対象となる訪問での初診患児症例数を増やしていく。また、対象者を増やすために、現在も継続して介入を行っている患児に対しても、初診時の医療情報を医療記録から集積し直し、必要な症例数の増加に努める。 また、医科や他職種が摂食指導開始可能と判断する目安としている全身状態や発達状況を調査するために適切なアンケート項目を作製し、診療上連携している医科や訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション職へ広く配布・収集していく。アンケート項目の内容としては、①全身状況:医療的ケアの使用状況、吸引回数の増減、外部観察上の嚥下反射の有無等を含める、②全身発達状態:粗大運動能だけではなく、手指運動や感覚認知を含める、とする。また、初年度の調査状況から調査が必要と考えられた、脳の障害部位やNICU入院中の嚥下訓練の有無・内容についても医科への対診や家族からの聞き取りを進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、当初の予定では、初年度に対象者とした患児の在宅における摂食指導を継続、追跡調査していくために咽喉マイク一式等を購入する予定であったが、対象者の確保、在宅訪問診療の継続にCOVID-19感染拡大による遅れが生じているために、購入に至らず、次年度以降の購入を予定している。 また、対象データの解析に使用するため統計ソフトを購入する予定であったが、同様に次年度に購入する予定である。
|