研究課題/領域番号 |
21K17548
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
伊東 大輝 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員研究員 (60881472)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | MRエラストグラフィ / 腱板筋群 / 画像処理 / MRIパルスシーケンス / 硬度 / 異方性 |
研究実績の概要 |
MRエラストグラフィ(MRE)とは振動が組織に伝わる様子を、MRIを用いて画像化し、弾性率(硬さ)を反映させた弾性率画像を得る画像診断技術である。腱板筋群(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)において、棘上筋や肩甲下筋は触診での評価が困難であり、MREが「腱板筋群の硬度評価」に最適な方法論と考えている。 現在、臨床MREの画像処理はBlack Box化されている。そこで、任意のパラメータで実行できる新たなMRE画像処理ツールを開発した(Magn Reson Med Sci, doi:10.2463/mrms.mp.2022-0149)。本ツールには、ある特定の方向に伝播する波のみを抽出できるフィルタリング技術(directional filter)が内蔵されている。骨格筋(腱板筋群)には筋線維による異方性が存在するため、筋線維の向きと弾性波の進行方向の関係性により、推定される弾性率が変化する。そこに、本ツール内蔵のdirectional filterを適用することで、可視化される弾性波の進行方向を一方向に限定し、異方性による弾性率変化の影響を低減することが可能となる。 腱板筋群MREの再現性および正確性を向上させるためには、二次元から三次元のイメージング(3DMRE)へ拡張する必要がある。一般的に3DMREでは、3軸方向の振動変位データを収集する。現在のMRE撮像法では、3次元の変位を画像化するために、3回分の撮像を繰り返し行わなければならない。この場合、体動などによる動きのリスクが大きくなるため、弾性率推定誤差が生じる可能性が高くなる。これに対し、本研究では1度のMRE撮像で3軸方向の振動変位全てを可視化する新たな撮像技術を開発し、特許出願を行った(特願2022-108311)。開発した新たな技術を腱板筋群MREに適用し、正確性および再現性の高い撮像技術への改良を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MREは大きく分けて「撮像」と「画像解析」の2つのステップがある。腱板筋群MREは国際的に見てもこれまでに実施されていない新技術であるため、「撮像」と「画像解析」の両方の技術開発が必要である。本年度は、「撮像」のステップを中心に研究を進める予定であったが、被検者の確保にCOVID-19の影響があったため、「画像解析」のステップを中心に実施した。その結果、骨格筋(腱板筋群)MREの正確性を向上させる新たな画像解析ツールを開発した(Magn Reson Med Sci, doi:10.2463/mrms.mp.2022-0149)。また、「撮像」のステップにおいても研究を進めており、腱板筋群MREの精度を向上させるための新たな撮像方法を開発し、特許出願を行った(特願2022-108311)。したがって、当初の研究計画での研究順序が少なからず入れ替わったものの、全体的な進歩状況は「おおむね順調に進展している」といえる。申請者がMREの撮像から画像解析まで、独立して研究を進められる知識・技術を有していたため、COVID-19のような不測の事態においても対応が可能であったと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
腱板筋群MREの精度を高めるための振動パッドの開発および撮像条件の検証を引き続き行う。弾性波画像化の目途が立っている棘上筋・棘下筋・小円筋に対しては、撮像条件の改良を中心に進めていく。肩甲下筋に関しては、弾性波の画像化が不十分であるため、振動パッドの形状開発や配置位置等の加振方法の改良を中心に行う。また、それぞれの筋に対して、本年度に開発した新たな撮像技術・画像解析を適用し、腱板筋群MREの正確性および再現性の向上を試みる。上記内容の改良・検証が終わり次第、適切な条件をもってvolunteer studyを実施する。今後に続く調査の正確性を高めるためにも、まずは「20歳代・一般的な体型・男性」に対象者を限定し、平均的な腱板筋群の硬さを調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で発表を予定していた国際会議に参加することができなかった。これにより、旅費の発生がなくなった。またCOVID-19により被検者確保が困難となったため、その影響が小さい画像解析研究を中心に進めていた。よって、加振器具の調整に関わる出費が予定より少なくなった。今後のCOVID-19がどのような影響を及ぼすかどうか不明であるが、研究成果発表のための国際会議費用と加振器具調整用、今後のvolunteer studyに必要な費用を次年度に持ち越す。
|