仙腸関節性腰痛は,競技スポーツ選手において,椎間板ヘルニアと同程度の頻度で生じる一般的な病態であるが,有効な予防法が確立されていないことが問題視されている.本研究では,競技スポーツ選手と運動習慣のないコントロール群を対象に,質問紙調査ならびにスクリーニングテストを行い,競技種目別の仙腸関節性腰痛の頻度を明らかにすることを目的とした.また,仙腸関節性腰痛の発生に関わる仙腸関節の挙動・筋活動様式を明らかにすることを目的とした. 実験①では,陸上短距離選手31名(男子16名,女子15名),陸上女子長距離選手10名,女子バレーボール選手22名,女子サッカー選手14名,女子バスケットボール選手17名,定期的な運動習慣のない大学生42名(男子21名,女子21名)を対象に質問紙調査ならびにスクリーニングテストを行った.調査時に上後腸骨棘周囲に限局した片側性疼痛を有する,疼痛の最も強い部位として上後腸骨棘周囲を指し示す,仙腸関節障害に関連する整形外科的テストが陽性の全てを満たす者を「仙腸関節障害あり」とした.仙腸関節障害の有訴者率は,女子サッカー選手14.3%,陸上女子短距離選手6.7%,男子短距離選手6.3%,運動習慣のない女子大学生4.8%であり,その他の競技では仙腸関節障害を認めなかった.理学療法士による評価となったため,仙腸関節性腰痛と定義することは困難であったが,競技種目別の仙腸関節障害の頻度が明らかとなった. 実験②では,仙腸関節障害の有訴者を特定の競技種目より集めることが困難であったため,仙腸関節痛の既往を有する男子大学生9名,健常男子大学生12名を対象に片脚立位時の体幹筋活動,関節挙動を計測した.本研究の成果の一部は,第32回日本臨床スポーツ医学会学術集会にて発表され,今後,国際誌に投稿予定である.
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