研究実績の概要 |
令和五年度は、その研究課題2、3に取り組むため、大規模マラソンイベントへの参加者を対象にインタビュー調査、及びアンケート調査を実施した。インタビュー調査については1. マラソン参加によって獲得した価値、2. 価値の向上に繋がった行動(顧客価値共創行動)について、質的データ分析手法である継続的比較法(Boeije, 2010)を用いて分析した。結果として、大規模マラソンイベントへの参加による獲得価値として快感情、健康、人的資本、社会関係資本などが抽出され、また価値共創行動については顧客参加行動(目標設定、責任ある行動、情報探索)、顧客市民行動(仲間との交流、援助行動)などが抽出された。アンケート調査においては、Web調査を活用して過去1年間に国内のマラソン大会参加経験のある者1041名を対象に、スポーツの社会効果(Lee et al., 2013)、及び顧客価値共創行動(Youjae & Taeshik, 2013)の尺度を用いて概念間の因果関係を明らかにし、モデル化することを試みた。しかし、分析の過程で尺度の収束的妥当性、及び弁別的妥当性が基準値を下回ったことで、想定したようにモデル化することができなかった。その主な要因としては、異なる文脈で開発された尺度をスポーツに応用したため、尺度の妥当性が確保されなかったと考えられる。特に、これまで顧客価値共創行動についてはスポーツの文脈で尺度開発がされていないため、今後本研究を発展させるためには尺度の開発から始める必要がある。研究期間全体を通して得られた成果としては1. 文献レビューを通した大規模スポーツイベントにおける社会効果の特定、2. インタビュー調査を通した地方の大規模スポーツイベントにおける社会効果の先行要因の特定および新たな先行要因としての顧客価値共創行動(目標設定、仲間との交流)が抽出できたことが挙げられる。
|