研究課題
競技者特有の高強度・長時間の運動・トレーニングはヘプシジン(鉄の吸収を阻害するホルモン)の分泌を亢進させ、鉄欠乏を誘発するという新たな視座からの研究が注目されている。申請者は、アスリートの低エネルギー状態が運動誘発性のヘプシジンの亢進に及ぼす影響について着目している(Ishibashi et al.2020)。アスリートでは、Female Athlete Triad(FAT)と呼ばれる減量などを目的とした不適切な食事制限による「low energy availability(LEA; 利用可能なエネルギー量の低下した状態)」が、月経異常や疲労骨折などを誘発する原因として考えられているが、LEAのアスリートでは貧血も多くみられる。LEAでのトレーニングは、低い利用可能エネルギーは通常状態と比較して日中のヘプシジンの分泌を慢性的に亢進させる可能性が高いと考え、鉄欠乏を生じさせる要因となりうるのではないかと仮説を設けた。今年度は、短期間での低い利用可能エネルギー(除脂肪体重あたり20 kcal/kg以下)状態での運動が通常状態(除脂肪体重あたり45 kcal/kg以上)と比較し、ヘプシジン分泌亢進の影響により鉄代謝を低下させるか否かについて検討した。
2: おおむね順調に進展している
2023年度に計画していた研究課題である介入実験については、予定通りに実施することができており、概ね順調に進展していると言える。しかしながら、得られたサンプルの解析などを実施することが出来ていないため、次年度実施する予定としている。
2023年度に得られた研究課題の解析を実施し、研究報告を行っていく。2024年度においては、実際にアスリートのエネルギーバランスを改善することにより、運動前後におけるヘプシジンの分泌応答が抑制され、鉄の吸収率が増加するか否かについて検証する。
今年度得られたサンプルの解析のための試薬などを全て購入していないため、次年度使用額が生じた。
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