本研究は、うつ病やオーバートレーニング症候群などの精神疾患の発症に「運動」「栄養」がどのように関連しているかを検討した。そのため、うつ病モデルマウスである社会的敗北モデルマウスを用いて、運動介入、食事介入を実施した。柑橘フラボノイドであるヘスペリジンの給与は、社会的心理ストレスによるうつ病モデルマウスの脳内のトリプトファン-キヌレニン経路を調節することで、うつ病モデルマウスのうつ病用行動を抑制することが明らかになった。また、ヘスペリジンの給与は、急性炎症ストレスによるうつ病モデルマウスの脳内のトリプトファン-キヌレニン経路を調節し、末梢の白血球数を調節することを明らかにした。 また、アスリート選手の運動後の尿中代謝産物をメタボローム解析した。尿中代謝産物は、467種類の代謝産物を検出することができた。チームスタッフの尿中代謝産物と比較して8つの代謝産物がアスリート選手で有意に増加していることが明らかとなった。アスリートの尿中代謝産物は、トレハロースやマルトース、馬尿酸が有意に増加していた。しかし、尿中アミノ酸量は、チームスタッフとの有意な差は検出されなかった。 うつ病の発症原因の一つに、トリプトファン-キヌレニン経路が関連していることが示唆された。骨格筋は、トリプトファン-キヌレニン経路を調節し、うつ病発症に関連する代謝産物を代謝し脳への輸送を止めることが示唆されている。しかし、運動後のアスリート選手の尿中代謝産物をみると、トリプトファン代謝産物は、チームスタッフと差がなかった。今後、うつ病モデルマウスに急性・慢性的な運動負荷をかけ、うつ病発症に関連するトリプトファン-キヌレニン経路がどのように変化するかを検討していく。
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