研究実績の概要 |
本研究を行う上で細胞に親和性の高い培養基材の作成が必須である。これまでに、生体骨格筋に脱細胞処理を行い、伸展性と細胞親和性のある細胞外マトリクスからできたシート状素材を得る方法を開発し、細胞培養に用いて検討している。そこで脱細胞手法のさらなる改善を行い、接着性の低い細胞に対しても使用可能な培養基質の改良により手法を決定することを目的とした。骨格筋スライスから脱細胞処理によって作成した細胞外マトリクスからなるシート状素材を細胞培養基質として、iPS由来の細胞が接着しやすいようにラミニンとエンタクチンによる修飾を行った。その結果、iPS細胞から分化誘導した筋細胞が高効率で接着することを確認した。これによって、接着性の低い細胞に対しても使用可能な改良型の培養基質を作成できた。 次に、DMD患者由来のiPS細胞とその遺伝子修復株からMyoD強制発現によって筋細胞に分化を行い、細胞外マトリクスシート上に播種し、筋管細胞まで分化を行った。分化した筋管細胞を細胞外マトリクスシートごと一軸性の機械的伸展(20%,1Hz, 90min)を行い、細胞損傷に関連するマーカーを測定した。その結果、DMD筋管細胞において、伸展後にサルコメア修復に関連する遺伝子(XIN,FLN-C,PGM5)の発現が大幅に高まった。また、細胞から漏出する10種のmiRNAが修復株筋管に比べて、伸展後のDMD筋管細胞で増加していた。また、伸展後のDMD筋管細胞ではアポトーシスに関連する遺伝子であるCASP3, CASP9の発現が高まっていた。このことから、これらの遺伝子発現とmiRNA漏出によって細胞損傷の程度を予測するバイオマーカーとして使えることが明らかとなった。
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