研究課題/領域番号 |
21K17592
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐渡 夏紀 筑波大学, 体育系, 助教 (60844983)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MRI / 形態 / 適応 / 個人差 / 慣性 / 可塑性 |
研究実績の概要 |
昨年度に予定変更した通り、砲丸投競技者の測定を実施した。昨年報告した短距離競技者の下肢とは異なり、上肢筋群の力発揮が大きく要求される競技者において、基本的な上肢筋群の発達様相の研究が少ない。そのため、まずは上肢筋群の横断面積を砲丸投競技者と特定の競技に従事しない一般成人と比較することで、筋の発達様相を検証することとした。対象筋は、砲丸投競技に見られるような上肢の「押し動作」の主動筋である「大胸筋」「三角筋」「上腕三頭筋」「掌屈筋群」とした。その結果、全ての対象筋において絶対面積及び身体質量を用いて正規化された正規化面積の双方において砲丸投競技者で有意に発達していることが認められた。Sawilowsky (2009) の基準に基づいて群間差の効果量を検証すると、効果量が最も大きい"huge" と判定されたのは対象筋で最も近位部にある大胸筋と最も遠位部にある掌屈筋群の断面積であった。つまり、下肢で見られた「近位ほどよく発達し、遠位は大きくは発達しない」というこれまでの知見が上肢にはそのままは適用できず、競技者における発達の近位-遠位部位差が下肢に比べると上肢では小さいことが示唆された。本内容は国内学会で発表すると共に、国際誌に投稿した。 最終年度にかけて部位特異性と負荷特異性について検証する予定であったが、実験が想定より速いペースで進んでおり、砲丸投競技者に加えて既に長距離競技者の測定が進行している。現在、取得した長距離競技者のMRIデータの処理と慣性特性の算出を進めている。また、昨年度スケジュールの関係で取得できなかった長距離競技者の再スケジュール調整を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
砲丸投競技者だけでなく、長距離競技者の測定もかなりの部分が進行している。最終目的達成のための研究対象変更や国内外の研究動向を鑑みた上での解析方法の調整も含めて順調にデータ収集・解析が進み、成果が上がり始めている。さらに、昨年度投稿した成果はスポーツ医科学分野で権威ある学術誌 (Medicine & Science in Sports & Exercises) に掲載された。以上の測定・解析・成果発表から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在再スケジューリングを進めている残りの長距離競技者のデータ取得と進行中の慣性特性の解析を完了する。短距離競技者で得られた成果と比較することで形態的な適応の慣性特性という側面における負荷特異性の検証を完遂しする。 以上の最終年度の取り組みで得た知見を組み合わせ、人間がもつ形態的な可塑性における「動かしにくさ」の側面に関する一般的な知見の獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定より実験が進んだため、実験が滞ることがないよう前倒し申請を行っていた。しかし、昨今の半導体不足の影響によって、予定していた測定機器の納品ができなくなってしまい、各種の予算の見直しが必要となり結果的に次年度使用額が生じた。 更なる測定に関わる被検者謝金や技師謝金、消耗品購入、投稿費用などに割り当て、最終年度に全て使用する予定である。
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