研究課題/領域番号 |
21K17601
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
片岡 由布子 筑波大学, 体育系, 研究員 (10896244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | TRPA1 channel / NOS / Cinnamaldehyde / Forearm blood flow |
研究実績の概要 |
本研究では生体への様々な刺激を感受するセンサーの1つであるTRPA1チャネルと、皮膚血管拡張物質と考えられるNO合成酵素であるNOS、 シクロオキシゲナーゼ(COX)そしてKCaチャネルに着目し、TRPA1チャネルを薬理的に刺激した時の皮膚での血管拡張にこれらが関与するか明らかにするため、実験を行った。実験は9名の被検者(女性4名、男性5名)を対象とし、室温25℃の実験室にて安静座位で行った。前腕部真皮(皮下~1mm)に透析プローブを計4本挿入した後、各透析プローブ処置部にレーザードップラー血流プローブ(皮膚血流量測定用)を取り付けた。10分間のベースライン測定後、①リンゲル液処置部(コントロール部位)、②NOS阻害薬処置部(L-NAME)、③COX阻害薬処置部(ketorolac)、④K Caチャネル阻害薬処置部(TEA)に、TRPA1チャネルを薬理的に刺激する効果のある、シンナムアルデヒドを30分ずつ段階的に、それぞれ2.9、8.8、26、そして80%と濃度を上げながら投与した。皮膚血流量に加え、血圧、心拍数を測定し、皮膚血管拡張度(皮膚血流量/血圧)を算出した。 8.8%濃度以上のシンナムアルデヒド投与時、コントロール部位において皮膚血管拡張度はベースラインと比較して27.4%(P < 0.001)増大した。NOS阻害薬処置部では、コントロール部位と比較して8.8、26、80%濃度のシンナムアルデヒドによる皮膚での血管拡張が抑制された(全てP ≦ 0.05)。一方、COX阻害薬処置部とKCaチャネル阻害薬処置部は、全濃度でコントロール部位と比較して、シンナムアルデヒドによる皮膚血管拡張度に差はなかった(全てP≧0.130)。ヒトにおいて、TRPA1チャネル活性化による皮膚での血管拡張調節にNOSは寄与する一方、COX、KCaチャネルはほとんど寄与しないと結論付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験結果を国際学会Experimental Biologyにて発表し、そこで他の研究者からもらった意見からいくつか修正を重ね、論文にまとめた。TRPA1チャネルを薬理的に刺激した時の皮膚での血管拡張にNOSが関与することをヒトを対象として明らかにした実験は初めてであり、論文としてJ Cardiovasc Pharmacolに掲載された。このように進捗状況はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
暑熱環境下、運動時など条件を広げて皮膚での血管拡張にTRPA1とNOSが関与しているか、実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前の研究で使用していた試薬・消耗品が残っており、それらを使用した為、当初の使用額より抑えられた。 再度パイロット実験、条件検討を行うため、試薬購入を予定しており、次年度に使用額が生じた。
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