本研究の目的は、末梢神経への電気刺激と静的ストレッチングの組み合わせが足関節の柔軟性に及ぼす影響を明らかにすることであった。対象筋の相反する関節トルクを生成する筋 (拮抗筋)の制御機序である相反抑制の強さを操作する実験を行った。対象者の前脛骨筋の支配神経である深腓骨神経に20分間の電気刺激を与えた。電気刺激は相反抑制を促進するパターン刺激と相反抑制に影響しない一定間隔刺激の2条件とした。電気刺激の前後で、ヒラメ筋の相反抑制の強さを計測した。相反抑制の強さは、深腓骨神経の条件刺激とヒラメ筋の支配神経である後腓骨神経に試験刺激を0-5ミリ秒の間隔を空けて行い、試験刺激による脊髄反射の減衰率で評価した。パターン刺激は、ヒラメ筋の相反抑制を有意に促進させ、一定間隔刺激は相反抑制を有意に減衰させた。 次に、深腓骨神経への電気刺激と静的ストレッチングの組み合わせが足関節の柔軟性に与える影響を調べる実験を行った。対象者の深腓骨神経に20分間の電気刺激を与えた後に3分間の静的ストレッチングの介入を行った。介入の電気刺激の条件は、パターン刺激、一定間隔刺激、刺激のない3条件とした。介入の前後に等速性筋力測定器を用いて毎秒1度の改訂速度で足関節を背屈させ、足関節の柔軟性を計測した。足関節の柔軟性は、足関節の最大背屈角度、受動トルクの傾き、最大背屈角度での受動トルクで、それぞれ足関節の可動域、筋腱複合体の硬さ、痛みの閾値を評価した。3条件ともに足関節の可動域を有意に拡大させ、筋腱複合体を柔らかくさせた。パターン刺激と一定間隔刺激は静的ストレッチングの痛み閾値を向上効果を高めた。以上の成果から、末梢神経への電気刺激は、刺激のパターンに関わらず知覚的な柔軟性を向上させることが明らかになった。
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