研究課題/領域番号 |
21K17615
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
小塩 靖崇 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部, 研究員 (10807085)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アスリート / メンタルヘルス / 疫学 / スポーツ / スクリーニング |
研究実績の概要 |
日本ラグビーフットボール選手会との共同で本研究を実施している。日本のアスリートであるラグビー選手への調査を実施し、日本のトップカテゴリーのアスリートにおけるメンタルヘルス(精神疾患が疑われる状態を含む)の実態について、メンタルヘルス不調が高頻度に発生することやその要因、不調時の対処行動の特徴などの知見を発表した。また、新型コロナウィルス感染症拡大中の同集団に調査結果から、環境変化により状態が改善される比較的軽症な一群(心理的ストレス)がいる一方で、専門家による治療を要する一群(軽度から重度のうつ不安症疑い)が一定数存在することを示した。これらの結果は、国内スポーツ組織にメンタルヘルスケアを提供する専門家を設置するといった、体系的なメンタルヘルスケアシステムが必要であることを示唆するものであった。
アスリートに特化したメンタルヘルス症状評価尺度(Athlete Psychological Strain Questionnaire: APSQ)の日本版を開発し、豪州アスリートとの比較評価を行った。APSQ尺度得点は日本のアスリートで有意に高く、専門家による治療を要する状態と区別するためのカットオフ値が異なる可能性を示した。
その他、アスリートがメンタルヘルス不調の経験を、他のアスリートや一般人に向けメッセージを発信する「よわいはつよいプロジェクト」を立ち上げ、研究で得た知見の公表と共に、アスリートからのメッセージやインタビュー記事を公開している。日本ではまだ不足しているメンタルヘルス教育コンテンツとして役立てられる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アスリートのメンタルヘルス実態調査及びスクリーニングツールの開発に関する知見を、国内外の学術誌で発表し、メディアでの発表を積極的に行っている。本研究で得た知見を基に、国際共同研究に発展・展開することが決まった。
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今後の研究の推進方策 |
国内のアスリートとして、ラグビー以外の競技アスリートや女性アスリートへの実態調査実施を検討する。また、日本におけるメンタルヘルスケアシステムの開発に資する知見を見出すため、先行研究で示されたような欧米諸国や豪州からの知見との相違点及び日本のアスリート特有の傾向に起因する要素を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が予定よりも安く購入できた。翌年度の調査等実施に用いる予定である。
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