研究実績の概要 |
アスリートの競技力向上をねらいとした最先端のトレーニングの一つに「低酸素トレーニング」が挙げられる。近年では、無酸素性能力の改善をねらいとした「低酸素スプリントトレーニング」の有効性が数多く報告され(Faiss et al. 2013, Brocherie et al. 2015, Kasai et al. 2017)、当該分野における急速な発展が指摘されている(Millet et al. 2019, Girard et al. 2020)。その中で、低酸素スプリントトレーニングの推奨プロトコールが示され(Brocherie et al. 2017)、国内外のスポーツ競技現場において実践されつつある。また、低酸素スプリントトレーニングの実施により、骨格筋内の代謝応答(血流量、酸素消費量)が亢進することを我々は明らかにしたが(Kasai et al, preparation)、運動後その影響が持続する時間は明らかにされていない。したがって、低酸素スプリントトレーニング後の代謝応答を詳細に明らかにする事で、科学的エビデンスに基づく汎用性の高いトレーニングプログラムを提示することにつながることが期待される。 そこで、本研究では、低酸素環境下での一過性のスプリント後における筋血流量および筋酸素消費量の経時的変化を明らかにすることを目的とする。スポーツ競技者10名を対象に、スプリント運動を低酸素環境(酸素濃度:14.5%)または通常酸素環境(酸素濃度:20.9%)で実施し、運動終了40分後まで10分毎に経時的に各種測定を行う。運動パフォーマンス、全身循環指標(動脈血酸素飽和度、心拍数)、局所循環指標(筋血流量、筋酸素消費量)を測定する。現在、半数の被験者数であるが、筋血流量および筋酸素消費量は低酸素条件が通常酸素条件と比較して20分後まで高値を示した。
|