本事業では、子どもの個性と状態に応じた心身の自己調整のためICT教育プログラムを開発することを目的に、以下の研究を実施した。 研究1:学校現場で実施可能な心身の自己調整法の開発:基礎的実験 研究2:個性と状態に応じた個別「最適化」自己調整プログラムの開発:予備的介入 研究3:個性と状態に応じた個別「最適化」自己調整プログラムの開発:本介入 研究1では、学校現場で実施可能な心身の自己調整法の開発を行なった。結果として、マインドフルネス瞑想法、ボディスキャン、ヨガ、体ほぐし運動において「リラクセーション効果」が、一方、クッション運動、ストレッチ、ダンス、インターバル運動において「アクティベーション効果」が認められ、学校現場において短時間、かつ、簡便に実施可能な自己調整法を選定することができた。研究2では、研究1の成果を踏まえ、学校現場での心身の自己調整及び目標設定に関する教育を可能とするICT教育プログラムを開発し、予備的な介入研究を行った。結果として、介入プログラムに対して53%の生徒から肯定的な評価(否定的:10%)を得た。自由記述で得られたフィードバックをもとにプログラムの精緻化を図った。研究3では、研究2の成果を踏まえ、A市の全中学校9校の1年生、2年生を対象にし、A中学校を介入群(分析対象:61名)、それ以外の中学校を統制群(分析対象:530名)とした。結果として、介入群において、「新しいことへのチャレンジ」や、学校教育における「目的やめあての意識」「興味関心」、日常生活における「長期的な活動計画の立案」といった項目において有意な向上が確認された。一方で、心身の健康に関する項目のうち「心配事」項目で、介入群でのみ有意な向上が認められた。本研究を通して、子どもの個性と状態に応じた心身の自己調整のためICT教育プログラムの有効性と、実施上の課題を整理することができた。
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