研究課題/領域番号 |
21K17622
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山下 直之 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 助教 (70800738)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日射 / 脱水 / 発汗 / 湿球黒球温度 |
研究実績の概要 |
本研究は夏季のスポーツ観戦者や日常生活活動としての歩行や軽運動時を想定して暑熱環境での日射の有無が体温調節反応に及ぼす影響を検討することを目的とする。今年度の実験では、同程度の温湿度にて輻射熱のある条件とない条件、同程度の湿球黒球温度環境であるが輻射熱のある条件とない条件とで椅座位安静にて暑熱負荷をかして体温調節反応の違いを検討した。測定項目は核心温、皮膚温、心拍数、局所発汗量、皮膚血流量、血圧、温熱感覚、温熱的快適性であった。その結果、同程度の温湿度環境で日射がある場合には日射のない場合と比較して直腸温の上昇率が有意に高く、局所発汗量、皮膚血流量や心拍数、体重減少量も有意に高い値を示した。また温熱感覚と温熱的快適性も有意に高かった。 同程度の湿球黒球温度に設定した実験でも日射のある条件では日射のない条件と比較して、軽度ではあるが核心温の上昇率が有意に高く、局所発汗量や皮膚血流量、皮膚温、温熱感覚、体重減少量も有意に高い値を示した。一方、心拍数や血圧、温熱的快適性については条件間に有意な差はなかった。 これからのことから、日射環境で座位安静をするスポーツ観戦時には温度や湿度が同程度であっても日射のない場合と比較して、発汗量の増大や皮膚血流量の増加による体温調節により核心温の上昇率は軽度に抑えられるものの、体重減少量が多いことから脱水を予防する必要が示唆された。また、日射のある場合には核心温の上昇率は軽度であるものの、暑く感じることやそれに伴う不快感も上昇することが示唆された。 またWBGTが同程度であっても日射がある場合とない場合とでは体重減少量や体温調節反応が異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験室内の温湿度環境を一定に保つための温風機や除加湿器の選定や設定に時間を要し、実験開始が遅滞し、データの取得が主となり学会発表に至らなかったため「やや遅れている」と判断した。しかしながら、実験の進行状況についてはほぼ計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度のデータを学会にて報告するとともに論文投稿を目指す。実験については、歩行などの軽運動を想定した運動強度にて運動実験を行い、日射の有無による体温調節反応におよぼす影響を検討する。運動強度については相対的負荷強度を用いる。得られたデータを研究発表および論文投稿をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験対象者数よりも少ない対象者数で想定していた結果が得られたため次年度に繰り越した。繰り越した金額と合わせて、次年度は実験対象者への謝金に充てるとともに、学会発表での旅費と消耗品費や論文校正費に充て、計画に沿って執行する。
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