当初設定した研究課題について、2022年度の成果は以下の通りである。 1.中国武術の史・資料について、主に以下のものを収集することができた。 ①中国国内の史・資料について、南北朝から中華民国期の武術伝書40種を収録した『中国古代武芸珍本叢編』下輯(2020年、全10巻)、1980年代に発行された6種の武術雑誌『柔道与シュアイジャオ』(1983-90年、31冊)、『武術健身』(1982-86年、12冊)、『搏撃』(1984-85年、6冊)、『少林武術』(1986-87年、3冊)、『中華気功』(1983年、1冊)、『中州武術』(1984年、1冊)を収集した。このうち日本および武道に関連する重要資料の日本語訳に取り組んだ。②日本国内の史・資料について、福昌堂が発行した武術専門誌『武術(うーしゅう)』(1982-2005年、112冊)、日本武術太極拳連盟機関誌『武術太極拳』(2022-2023年、16冊)、その他『太極拳運動』(不昧堂、1977)、『中国拳法正伝』(講談社、1985)など中国武術関連の書籍36冊を収集した。③また2022年の間行われた、第30回JOCジュニアオリンピックカップ武術太極拳大会(4月、神奈川)、第39回全日本武術太極拳選手権大会(7月、東京)、第20回南関東ジュニア武術太極拳大会(8月、埼玉)、第77回国民体育大会武術太極拳競技会(9月、栃木)などの競技大会でフィールドワークを行った。 2.日本武道が中国武術の近代化に及ぼした影響について、主に以下の成果をあげた。 ①新たな資料が発見されたため、柔道とシュアイジャオの関係について、2022年5月米国シカゴで行われた北米スポーツ史学会で口頭発表を行った。②中国の伝統スポーツである太極拳が日本で普及した過程と、その過程における武道の影響について、韓国の学術誌で発表した。
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