日常生活の荷物運びや集団スポーツのパス等において,2人以上の人間が巧みに動作を相互作用させることで,1人ではできないことを2人で実現していると考えられる。先行研究では,2人の参加者が同時に人差し指で力発揮し,その総和を二つの目標値に分離的あるいは周期的一致させる個人間課題と1人の参加者が力検出器に人差し指で力発揮し,目標値に一致させる個人課題を比較した。その結果,個人間課題は個人課題よりも力の誤差が小さく,2人は1人よりも高いパフォーマンスとなる” Two head are better than on 効果(2HBT1効果)”が生じた。さらに,本研究では,先行研究と同様の周期的・分離的力発揮と2人の参加者が力発揮し,その総和を目標値に対して持続的に一致させる課題を比較し,力のタイミングの有無によって2HBT1効果が生じるかどうかを検討した。 その結果,持続的力保持では,個人課題と個人間課題の有意な主効果が認められなかったが,分離的力発揮と周期的力発揮では,個人間課題が個人課題よりも低い誤差であった。したがって,タイミングの制御を必要としない持続的力保持では2HBT1効果が生じないが,タイミングの制御を必要とする周期的力発揮と分離的力発揮では2HBT1効果が生じた。本研究は力とタイミングのように複数パラメタータの相乗効果が2HBT1効果に影響することを示唆し,実際の集団スポーツの場面や日常生活において,2HBT1効果を生みだすための一助となると考えられる。 本研究の成果はSpringer Nature社の発行する国際学術誌(Experimental Brain Research)に掲載され,国際的な評価を受けた。 さらに実験Ⅰで用いた課題中に脳波を測定し,タイミング制御を必要とする個人間の力発揮課題における脳活動を明らかにすることを予定している。
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